九州地方整備局のTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)は25日、福岡県久留米市の久留米市役所を訪れ、原口新五市長に被災状況の調査結果を報告した。同局では、これまで災害調査のデジタル化を進めており、今回の調査では3次元点群データなどのデジタル技術を活用することで、安全に留意しながらも10日間で調査を終え、被災自治体への早期の報告を可能にした。データは災害査定に使う。
9日から停滞する梅雨前線の影響により九州北部に線状降水帯が複数発生し、記録的な大雨が各地を襲った。同市では、24時間雨量が過去最大を観測したほか、田主丸町竹野地区の千之尾川沿いに大量の土砂と流木が流入し、複数の住宅に被害が及んだ。
同局は、市からの要請を受けて13日にTEC-FORCEの先遣隊を、18日に本隊を派遣し、被災状況の調査を開始した。同隊は、河川4班、道路1班、現地支援1班、後方支援1班、ドローン2班の計9班37人を派遣。土日を除く10日間で延べ242人が活動した。
DX(デジタルトランスフォーメーション)技術を活用した調査となり、被災写真をクラウド上で共有するTEC支援アプリの活用や、点群3次元モデルの計測、360度カメラによる撮影、UAV(無人航空機)による空撮を実施した。従来手法と比べて10倍程度の作業の効率化を実現した。
調査報告によると、河川は調査対象20河川のうち15河川37カ所、道路は11路線17カ所の被災を確認した。河川の主な被災箇所となる冷水川では、巨瀬川と合流する付近の堤防が約18mに渡って決壊した。復旧方法はアスファルト舗装が妥当だとし、最も越流水が集中する区間をカバーできるように補強すべきとした。
一方、道路については、田主丸町地徳地区の市道1074号で200mの道路損壊、竹野地区の市道1030号で30mの道路崩壊などがあったとした。
市道1030号は、応急対策としてシートで保護することを提案し、最終的には地質状況を確認して復旧方法を検討すべきとした。
TEC-FORCEの猪原浩二隊長は「調査報告には被災箇所の写真のほか、応急対策の必要性と対策方法など技術的所見をまとめており、参考にしてほしい」。
原口市長は「対応して頂いた皆さんに心から感謝する。調査内容を速やかにまとめ、激甚災害の手続きや復旧・復興に向けてまい進したい」と語った。