◇異文化として和風建築を提案
今井社長は同社設立以前、長野県上松町での木曽ヒノキの伐採やカナダでのログハウスづくりに携わって林業・建設業での経験を積んだ。帰国後、山梨県の北都留森林組合で間伐作業をしている際、間伐材として利用できる木が安価な輸入木材に押されて「そのまま山に捨てざるを得なかった」ことに疑問を抱いた。
14年に同社を設立して住宅・店舗の新築などを手掛けるうち、海外で和風建築を求める需要がこれから増加するとの感触を得た。「例えば『ドラえもん』などに登場する畳と押し入れがある空間は、他国から見ると異文化だ」とし、まず着目したのはベトナムだった。同国は経済発展が進んで富裕層の人数も増えている。「富裕層のうち日本文化の愛好家が少数としても訴求すれば事業となる」と見込み、同国法人をハノイ市に設立した。
◇今後は〝本物〟が高付加価値を持つ
ベトナムに着目したきっかけは「人が若くて元気で、こういう人たちと共に働いてみたい」との印象を受けたことだった。同国にも和風建築を手掛ける会社が数社あるが、日本にあるものと品質に差がある。需要が増大するうちに違いの分かる顧客が増え、「〝本物〟が高付加価値を持つ」と予想する。
現在はRC造の建物のインテリアを和風にする案件が主だ。施設の種類はは富裕層の別荘やホテルなど。レストランや温泉レジャー施設など非住宅施設への拡大も狙う。
◇ドバイを起点に中東・アフリカへ
続いてドバイへの展開も計画中だ。これは中東・アフリカへの事業拡大も見据える。ドバイは世界有数の国際都市で外国人の往来が多く「世界に対して窓を広げる」意味がある。
ドバイでの展示会で、レバノンの材木商から相談を受けたことを機に木材輸出も視野に入れる。「日本は国内での木材需要が減る一方、戦後に植林した木が伐期を迎える。木材輸出への転換が国内の林業に不可欠だ」という現状に対し、「例えばレッドシダーやパインで和風建築をつくると見た目が異なったものになる。和風建築の市場を開拓することで、国産材の『和風建築に最適であること』を付加価値として輸出できれば」と構想する。
◇海外展開と人材確保・育成
鍵となるのは人材だ。和風建築を理解して海外に提案できる人材の採用は容易ではない。人材採用の情報発信と設計施工の受注拡大を兼ねて11月に東京・根津へ拠点を開設する。「国内だけでビジネスをやっていく会社に対し、若年層が閉塞(へいそく)感を抱いている。逆に海外展開へ魅力を感じる人材もいる」とも。
外国人が日本の大工のように和風建築を施工できるかについて、「将来的には育成したい」としつつ、大工の仕事は日本人の精神文化に依拠している面があるため、「そのままのやり方は難しい」と考える。他方でベトナムのほかドイツ、ベルギー、スウェーデンなどから人材を迎えている。「例えばベトナムの設計士は施主へ提案する図面を3Dモデルに起こすことなど、3Dモデリングを扱う技術が非常に高い」とそれぞれの強みを生かした社内体制の構築を進めている。