【BIM未来図DX】高砂熱学工業(1) | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【BIM未来図DX】高砂熱学工業(1)

DXは次の100年に向けた戦略/BIMデータベース化でコア事業の変革

 高砂熱学工業が、BIMを軸にDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略のかじを切った。陣頭指揮を取る横手敏一取締役CDXO(最高DX責任者)常務執行役員は「建設ライフサイクルの各業務プロセスをBIMでつなぐことがDX戦略の根幹になる」と語る。オートデスクのBIMソフト『Revit』を標準ツールに位置付け、現在は全国25現場でBIM導入が進む。BIMをデータベース化し、そこに蓄積したデータを各業務プロセスで効果的に使いながら、コア事業の変革へとつなげる同社の取り組みを追った。

 同社は建設ライフサイクルを九つの業務プロセスに区分けし、企画・設計から、見積もり、引き合い、原価管理、施工計画・施工図作成、工程管理、進捗管理、品質・安全管理、運用管理までの各段階をBIMでつなぐ。そのデータを時系列だけでなく、プロジェクト関係者にもつなげる「縦と横」の関係性強化が狙いだ。横手氏はDX戦略を実現する上で「BIMがデータをつなぐための中核ツールになる」と説明する。

 今年4月の組織再編では、DX戦略統括部を新設し、そこにDX開発部とDX推進部に加え、BIM推進部を創設した。DX戦略統括部の片山健一郎統括部長は「各業務プロセスで“武器”となる攻めのDXに向けた具体的なシステムを打ち出していく」と力を込める。そのためにも事業基盤を支えるBIMデータベースの蓄積が最重要課題だ。同社は受注プロジェクトへのBIM導入を本格化している。

20年3月運用開始の高砂熱学イノベーションセンターでBIM試行導入


 「この2年で現場展開のステージに到達した」。BIM推進部の齋藤英範部長は2021年8月にオートデスクと交わしたBIMの戦略的提携の覚書(MOU)をきっかけに、施工現場へのBIM導入が着実に進展していることを実感している。東京本店では10数現場でBIM導入が進行中。他の支店でも最低1現場はBIMを導入している。プロジェクト特性や現場の体制を見極めながら導入数をさらに増やしていく方針だ。

 そもそも同社がBIM導入の検討を本格化したのは17年からだ。これまでは別の設備CADを使っていた。施工や部材の情報を蓄積し、維持管理にも利活用するためには2次元ベースの従来システムでは限界があった。標準ツールの選定を進める中で、データベースとして機能するRevitの特性に注目した。BIM推進部の千葉俊担当課長は「他のシステムと連携しやすく、カスタマイズ性が高い点も強みと考えていた」と当時を振り返る。

 同社は、20年3月に運用を開始した高砂熱学イノベーションセンター(茨城県つくばみらい市)の施工段階でRevitを試行的に導入したほか、竣工案件をRevitでモデル化するなどの検証も進めてきた。交わしたオートデスクとのMOUを機に、社を挙げてRevitを基盤としたBIMワークフローの構築に乗り出した。

各業務で攻めのDXを打ち出す


 国内外の大手建設会社や設計事務所などと幅広く連携関係を構築するオートデスクにとって、高砂熱学工業とは国内設備工事会社と交わした初のMOUとなった。23年11月に創立100周年を迎える高砂熱学工業にとって、DXは次の100年に向けた事業戦略であり、その中核となるBIM基盤の確立は成長戦略そのものであった。横手氏は「既に海外ではオールBIMに取り組む設備工事会社がある。DXでは顧客が欲するデータの提供が前提になるだけに、まずはデータ基盤のBIM標準化が何よりも重要」と明かす。



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