【BIM未来図DX】高砂熱学工業(4) | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【BIM未来図DX】高砂熱学工業(4)

DX戦略に欠かせないBIM標準化/設備BIM研究連絡会も始動

 社を挙げてBIM導入にかじを切り、オートデスクのBIMソフト『Revit』を標準ツールに位置付けた高砂熱学工業にとって、BIMの標準化はDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を実現する上で欠かせない最重要課題の一つだ。今年1月に発足した設備BIM研究連絡会への参加を決めたのは、設備工事業各社が手を組み、BIM標準化に向かうことで、業界として成長していけるとの思いからだ。

 7社で発足した研究連絡会には現在、同社のほか、朝日工業社、新菱冷熱工業、大気社、ダイダン、東洋熱工業、日比谷総合設備、三建設備工業、九電工の計9社が名を連ねている。あえて幹事会社や代表者を置かず、対等な立場で協力し合いながら活動し、各社がもつ技術やノウハウを連携させ、設備BIMの標準化を目指す。

 これまで高砂熱学工業が自社内でBIMの共通ルール(テンプレート)に加え、設備モデルの構築に必要な部品データ(ファミリ)などの環境整備を進めてきたように、研究連絡会の参加企業もRevitを軸にBIM導入を推し進めており、標準化への思いは同じだ。DX推進担当の古谷元一執行役員は「Revitを使う企業同士のファミリ共有などは非競争領域であり、BIM普及を志す企業が標準化に向けて連携し合う意義は大きい」と強調する。

 活動も精力的だ。各社のBIM推進役が標準化の課題を持ち寄り、今後の方向性を議論する勉強会は当初、月1回で開いてきたが、現在は隔週のペースで開催するまでに活発化している。ウェブ参加も含め総勢35人が集う。同社BIM推進部の遠藤裕司担当課長は「標準化を実現しなければという強い思いを持つメンバーが集まり、ファミリ共有や教育など環境整備の方向性について活発に意見を交わしている」と強調する。

設備BIMのテーマにしたセミナーは大盛況


 BIMを軸に設備工事各社が連携する背景には、世界的にも建設業界におけるBIMの全面導入が広がり、設備工事各社へのBIM要求が拡大している状況がある。企業や案件ごとに求められる要求が異なり、今後さらにBIMプロジェクトが普及すれば対応が難しくなる。設備工事業としてBIM標準の枠組みを示せれば、顧客へのデータ提供を円滑に進められる。

 建築設備機器メーカーに対しても同様だ。今後、業界として設備BIMが進展すれば、設備工事業各社ごとにメーカーへの要求も異なる状況が広がる。BIMを軸にメーカーとの結び付きを深めるためにも標準化は避けて通れない。研究連絡会が5月に開いた機器メーカー向け説明会にはメーカー20社から42人が参加し、標準化への理解とともに、統一したファミリの提供を呼び掛けた。

設備BIM研究連絡会が設備メーカー向けに開催した説明会


 国土交通省では、建築BIM推進会議によるBIM普及の枠組みづくりが着実に進展している。建設業界へのBIM普及を目的としたBIM加速化事業にも取り組み、BIM導入の機運は一気に広がりを見せる。同社BIM推進部の齋藤英範部長は「設備工事各社が思いを一つにして、設備BIMの標準化を構築していきたい」と強調する。

 21年8月にオートデスクとBIM導入に向けた戦略的提携の覚書(MOU)を結んだ同社は、翌年に米国・ラスベガスで開かれたBIMイベント『AU(オートデスク・ユニバーシティ)』に参加し、海外の設備工事会社がBIMを軸に成長している姿を目の当たりにした。横手敏一取締役CDXO常務執行役員は「世界のBIMの潮流を知り、当社として進むべき方向性が間違っていないことを確信した」と語る。BIMを軸に置いた同社のDX戦略が一気にアクセルを踏み込むきっかけにもなった。

BIM導入に向けオートデスク「AU」も視察



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