【BIM未来図DX】高砂熱学工業(2) | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【BIM未来図DX】高砂熱学工業(2)

 高砂熱学工業にとって、オートデスクと交わした戦略的提携の覚書(MOU)から現在までの約2年間は、BIMを運用するための環境整備に力を注いできた。DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の中心にBIMを位置付け、各業務プロセスの変革を推し進める上で、早急に組織としてBIMソフト『Revit』を使いこなすスキルが求められる。MOUでは基盤となるBIMデータ活用の円滑化を柱の一つに置いた。

 先行してきたのはRevitを組織として使うための共通ルール(テンプレート)に加え、設備モデルを構築する際に必要な部品データ(ファミリ)の充実だ。既にテンプレート整備は目標の8割に達し、メーカーごと仕様が異なるファミリについても1部品に最低1社以上のデータを整えた。

 現在は全国25現場でBIM導入が進んでいる。今後さらに対象数を増やす方針で、導入拡大を見据えながら、テンプレートの整備を完了するとともに、ファミリのストック数も充実させる計画だ。BIM推進部の齋藤英範部長は「これからはRevitを使いこなすための導入教育にも乗り出す」と力を込める。今月から運用を始めた技術系社員対象の教育プログラムは2、3時間のカリキュラムを複数用意し、業務の合間にウェブで受講できるように工夫した。

2、3時間の教育カリキュラムを複数用意


 施工現場では、常駐する技術者やオペレーターが図面作成を担っている。これまで現場は2次元図面を軸に運営してきたが、これからはRevitで作成したBIMモデルから2次元図面を出力する流れになる。BIMプロジェクトでは本支店に置く技術生産課が支援する体制を確立し、現場のBIM導入を下支えしている。

運用を始めた教育風景


 現場の技術者やオペレーターにとっては、ツールの変更に合わせて業務の進め方を変える必要性も出てくる。齋藤氏は「BIMへの前向きな意識は着実に広がっているが、従来の枠組みから変わることへの抵抗は少なからずある。組織としてBIMに取り組むには一定のルールに沿って業務を進めなければいけない。われわれBIM推進部が導入現場と真正面から向き合い、成功体験を水平展開していきたい」と力を込める。

 豊富な現場所長経験を持つ堀金範織担当課長を4月からBIM推進部の配属としたように、現場へのBIM浸透を重視した推進体制づくりを進めている。堀金氏は自身の経験を踏まえて「1カ月あればRevitの基本的な操作は覚えられる。自らの思い描いたアイデアでデータを使うことができれば、現場はもっと有効にBIMを活用できるようになる」と現場目線で呼び掛けている。

 全国25現場のうち、ほぼ半数は東京本店以外の各支店が取り組んでいる。最前線の現場がきちんとBIMデータを構築し、使いこなすことが、現在進めている基盤整備はDX戦略の土台になる。DX推進部の中村邦昭部長は「BIMプロジェクトでは現場、技術生産課、BIM推進部の3者が密にコミュニケーションを取りながら進んでいる姿がある」と、現場の底力を感じている一人だ。

 先行する東京本店管轄のBIMプロジェクトでは、現場運営の効率化に向けてBIMデータを利活用する現場も現れ始めた。同社はそれらの成果を検証しながら、有効なアイデアについてはDX戦略の具体システムに落とし込んでいく。DX推進担当の古谷元一執行役員は「BIMのデータベースから各業務プロセスに情報を流す上で、現場の情報をきちんと蓄積することが何よりも重要」と強調する。

DX戦略ではデジタル人材を育成



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