【BIM未来図DX】高砂熱学工業(3) | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【BIM未来図DX】高砂熱学工業(3)

BIMが現場のマネージメントツールに/協力会社の導入にも広がり

 都内で建設中の大学プロジェクトでは、2022年3月に竣工したA棟に続き、B棟も高砂熱学工業が空調工事を担当している。A棟の着工時期は同社がBIM導入に向けてオートデスクと戦略的提携の覚書(MOU)を結んだ半年ほど前となり、試行の位置付けながらRevit活用の初弾プロジェクトに選定した。この流れを発展させる形でB棟は精力的にRevitの活用に取り組む。全国25カ所で動くBIMプロジェクトの模範となる現場でもある。

 現場を統括する東京本店第二事業所技術一課の森大作業所長は「設計変更に伴う見積もり作成の際、BIMでリアルタイムに集計したデータを活用している」と、その効果を実感している。工事進捗(しんちょく)は8割に達し、年明けから最盛期を迎える。これまでの部材発注では図面から数量を拾い、それを表計算ツールに打ち込んでいた。初弾プロジェクトであったA棟ではまだパラメーター項目の調整をしていたが、B棟ではシステムが整い、「現場のマネージメントツールとしてBIMが機能している」と手応えを口にする。

社内でもBIMの流れが浸透


 現場では、BIMモデル作成や導入支援などを東京本店の技術生産一課が担っている。A棟時代から支援役として活動している木内仁主任はオートデスクのハンズオン研修を受講した上で挑み、今ではB棟現場のBIMを先頭に立って下支えする。「ファミリなどの環境整備が完了し、現場がBIM導入の効果を発揮できるようになった」と手応えを感じている一人だ。

模範となるB棟現場のBIM活用


 東京本店では現在、10数現場でBIM導入が進行している。Revitの操作支援を中心に各現場への教育的なサポートも担当している同課の釜澤由紀主任は「Revit活用に慣れ始めた現場からは、より突っ込んだ質問が出てくるようになっている」と語る。中には技術一課の導入支援を必要としない現場もあり、「BIMの流れが着実に浸透している」と実感している。

 Revit初弾プロジェクトのA棟では、ダクトメーカーが共有したデータを製造作業に連携する試みにもチャレンジした。森氏は協力会社とのBIM連携が実現すれば「互いがメリットを享受できる」と考えている。B棟現場で効果を得ているBIMによる見積数量の算出だが、協力会社は出力した図面を基に数量を手拾いしている。協力会社がBIMを使いこなし、モデルから数量を算出できるようになれば「われわれとの見積数量の差異も大幅に減り、調整の手戻りもなくなる」と期待している。

 協力会社からは、BIMを効果的に使う現場の話を聞きつけ、自らもRevitを覚えたいとの相談が複数社から出てきた。同社が目指すBIM活用は現場から発注、製造、納品まで一貫してBIMデータをつなげていくことだ。木内氏は「協力会社との連携を進めるには一定のルールづくりが欠かせない」と強調する。

 釜澤氏は「今後、ワンモデルを軸に現場の関係者が情報を出し入れするようになれば、オートデスクのクラウドツール『BIM360/ACC』の活用がより重要になってくる」と考えている。森氏は「BIMをデータベースとして位置付け、その中で情報をやり取りすることで、導入効果を最大限に発揮できる」と力を込める。Revit活用をきっかけに、協力会社との現場連携が一気に広がろうとしている。

 設備工事業各社では、同社と同様にBIM導入の動きが進展しつつある。Revit活用にかじを切った企業が手を組み、BIMの標準化に向け、今年1月に設備BIM研究連絡会が発足した。

(左から)木内氏、森氏、釜澤氏



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