【BIM未来図DX】高砂熱学工業(5) | 建設通信新聞Digital

5月7日 火曜日

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【BIM未来図DX】高砂熱学工業(5)

 高砂熱学工業のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略はどこに向かおうとしているか。標準ツールに選定したオートデスクのBIMソフト『Revit』をデータベースとして位置付け、そこに蓄積したデータを各業務プロセスが効果的に出し入れするプラットフォームの構築を目指す。今年5月には2021年12月に掲げたDX戦略を更新し、建物ライフサイクルにおけるGX(グリーン・トランスフォーメーション)実現への道筋を示した。横手敏一取締役CDXO(最高DX責任者)常務執行役員は「われわれは空調設備のトップランナーとして、人や地球に心地よい環境を創造する環境クリエイターへと進化していく」と力を込める。

左から千葉氏、中村氏、片山氏、横手氏、古谷氏、齋藤氏、堀金氏、遠藤氏


 同社は建設ライフサイクルを企画・設計、見積もり、引き合い、原価管理、施工計画・施工図作成、工事監理、進捗管理、品質・安全管理、運用管理まで九つの業務プロセスに区分けしている。BIMデータは建設段階に情報を付加しながら成長し、建物完成後の運用段階ではEMS(エネルギーマネジメントシステム)へとつながり、施設の最適なエネルギー利用を導く。同社はデジタル基盤を確立し、トータルカーボンソリューションを展開する。

 DX戦略では、各業務の効率化や高度化を導くための具体的なシステムを開発し、それによって業務の進め方をも大きく変えようとしている。横手氏は「BIMデータが業務をつなぐ役割を担うことで、新たな付加価値を創造し、建物ライフサイクルへの広がりを持つようになる」と強調する。それを具現化するためのシステム開発は、今年4月に新設したDX戦略統括部が各部門と連携しながら担っていく。

 片山健一郎DX戦略統括部長は「全国で動くBIMプロジェクトで検証しながら開発を進めており、プロトタイプが完成しつつある。攻めのDXの“武器”として順次、実用化していきたい。蓄積したBIMデータをいかに有効活用できるかがDX戦略の重要なテーマになる」と明かす。

 既に全国で動くBIM導入プロジェクトでは、設計変更に伴う数量見積もりをリアルタイムに算出するなど、現場が自主的にBIM活用を進めている。データの蓄積が進めば、業務プロセスの進捗(しんちょく)管理を見える化でき、設計作業などで業務の自動化にもつなぐことができる。

 同社は、オフサイトの生産施設で設備のユニットを生産して現場に搬入する「T-Base」にも、BIM連携を推し進める計画だ。Revitデータから加工・生産まで展開できる仕組みに切り替えることで、現場から生産への一貫したデータ連携が可能になり、大幅な生産性向上が実現する。建設業界にとっては時間外労働の上限規制がスタートする2024年問題も迫っており、業務の効率化や省人化が急務だ。DX推進担当の古谷元一執行役員は「当社にとってBIMがDXのインフラデータになってくる」と強調する。

 業務プロセスをBIMでつなぐ同社のDX戦略の進展と並行して、設備工事業各社のBIM標準化に向けた取り組みも進み始めた。横手氏は「建設ライフサイクルの中核にあるBIMデータは、次のプロセスにバトンタッチして新たな役割となり成長していく。業務の進め方は変わり、仕事にも楽しく取り組めるようになる。BIMは次世代の建設業を変えていくきっかけになる」と、BIMが働き方改革にもつながることを確信している。

DXで働き方改革は面から点へ



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