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【45°の視線】建築史家・建築批評家 五十嵐太郎氏 寄稿 『ライト展』と映画『アアルト』から

最終更新 | 2023/11/22 10:42

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◆ジェンダーの視点交え近代の読みなおし

 『フランク・ロイド・ライト-世界を結ぶ建築』展が、豊田市美術館で開催されている(12月24日まで)。これだけ大型のライト展は、学生の頃に足を運んだセゾン美術館以来だから、およそ30年ぶりの企画であり、今後は東京と青森に巡回する予定だ。その内容は、90歳になっても、なお作品を発表した長い生涯をたどりつつ、日本との関係、帝国ホテル、各時代の作品などを紹介しているが、個人的に興味深いのは、セクション3「進歩主義教育の環境をつくる」とセクション7「多様な文化との邂逅(かいこう)」である。

エリッサと過ごしたアアルトのスタジオ


 後者はライトの情報がどのように海外に伝搬されたか、あるいは彼の国際的な交友関係を取り上げ、前者は進歩的な考えをもつ女性のクライアントが多かったことに焦点をあて、いずれも昔の展覧会にはなかったアップデートだったからだ。米国の建築論では、1990年代からジェンダーやメディア論の視点が導入されるようになったが、そうした動向を反映したものと言えるだろう。

 ライトといえば、女性とのスキャンダルがよく知られていたが、今回の展覧会は、そうではない側面から新しく知ることが多かった。例えば、ライトのスタジオで1895年から1909年までシニアデザイナーを務めたマリオン・マホーニーの存在。彼女は女性運動や進歩的な教育に関わっただけでなく、マサチューセッツ工科大学(MIT)で建築の学位を取得した2人目の女性であり、イリノイ州で建築士の資格をとった最初の女性だったという。

 そしてライトによる進歩主義の教育施設には、しばしば女性が関わっている。例えば、クィーン・フェリー・クーンリーは、クーンリー・プレイハウス幼稚園(1911年)、スーザン・ローレンス・ダナも半公共的な教育空間をもつ住宅を依頼した。またライトは、フェミニストのメイマー・ボートン・ボスウィックやアリーン・バーンズドールと交友関係を持ち、後者の自邸や教育・演劇複合施設(リトル・ディッパー幼稚園やコミュニティー・プレイハウス計画)などを設計した。そして東京の自由学園(1921年)も、羽仁もと子・吉一夫妻が女学校として設立したものである。もちろん、ライトはこうした新しい教育に共感を示していた。

 現在、日本で公開中のドキュメンタリー映画『アアルト』(2020年)も、女性の存在が強く示されていた。監督ヴィルピ・スータリも女性であり、パンフレットによれば、アアルトが「人生をともにした2人の妻はどのような人物であったのかを探求したい」と思ったと述べている。なるほど、セゾン美術館のアルヴァ・アアルト展(1998-99年)と違い、ギャラリーエークワッドの企画展(2019-20年)とそれを拡大した『アイノとアルヴァ 二人のアアルト』展(世田谷美術館、21年)のように、共同設計した妻に注目した現代的な企画は既に存在していた。もっとも、今回の映画では、アルヴァと同じくヘルシンキ工科大学の同窓生であり、アルテックの発展に尽力したアルノが1949年に亡くなった後、52年に再婚した2人目の妻、エリッサも詳しく取り上げていることが興味深い。

 『アアルト』は天才を神話化する映画ではない。建築の空間を丁寧に紹介するというよりも、手紙やプライベートな家族のフィルムなどを活用しながら、アルノとアルヴァの複雑な関係を追う。例えば、海外に行っても人気者になる夫の帰りを待つ妻の心情が吐露される。エリッサは、アアルト事務所のスタッフであり、アルヴァのデザインをよく理解し、彼の死後は所長になり、未完成だったプロジェクトを仕上げたり、修復や保存、そしてアーカイブの管理を担当した。

 なお、映画のパンフレットに寄稿された宇井久仁子の文章では、フィンランドに女性建築家が多いことに触れ、その先駆けとしてヴィヴィ・ロンを紹介している。彼女は、20世紀の初頭に数々のコンペに勝ち、1919年に女性建築家のグループを結成し、42年に世界初の女性建築家協会を設立した。おそらく、こうしたジェンダーの視点を交えた、近代の読みなおしは、これからも続くことになるだろう。

 

(いがらし・たろう)建築史家・建築批評家。東北大大学院教授。あいちトリエンナーレ2013芸術監督、第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展日本館コミッショナーを務める。「インポッシブル・アーキテクチャー」「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」などの展覧会を監修。第64回芸術選奨文部科学大臣新人賞、18年日本建築学会教育賞(教育貢献)を受賞。『建築の東京』(みすず書房)ほか著書多数。

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