【巨大地震対策】建物を使い続けながら超高強度RC造柱を回復/鹿島 | 建設通信新聞Digital

5月19日 日曜日

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【巨大地震対策】建物を使い続けながら超高強度RC造柱を回復/鹿島

かぶりコンクリートの損傷

 鹿島は、超高強度コンクリートを使用したRC造柱を、建物の重量を受けたまま補修・補強する技術を開発した。設計想定を上回る大地震によって超高強度RC造柱が損傷した場合に、建物を使い続けながら柱の耐力と性能を維持・回復できる。鹿島の超高層RC造技術「HiRC工法」(ハイアールシー工法)と組み合わせることで、超高層RC造建物の設計・施工から維持(補修)まで網羅可能となり、建物の長寿命化にもつなげられる。

 柱部材のかぶりコンクリートに欠損や剥落が生じた場合は、まず損傷したかぶりコンクリートの一定範囲を除去する。除去した箇所の表面に所定の下塗り処理を施し、除去した部分を超高強度繊維補強モルタルで置換する。置換方法は、流動性の高い超高強度繊維補強モルタルを型枠に流し込んで成形する流し込み工法と、増粘剤を使用して流動性を落として固練りにした超高強度繊維補強モルタルを塗布するコテ塗り工法の2種類で対応する。補修・補強範囲の広さなどによって最適な工法を選択できる。

損傷部分の除去

 補修・補強材には超高強度繊維補強モルタルを使用する。鹿島が中心となって開発した特殊鋼繊維などで構成する超高強度繊維コンクリート「サクセム」をベースにしたもので、高強度・高靱性・高耐久性に加え、高い流動性も兼ね備えている。

 構造実験では、2分の1スケールで模擬した柱部材に想定される建物重量と地震力を負荷し、柱部材のかぶりコンクリートの一部が剥落するまで損傷させた後、柱に建物重量を負担した状態で柱部材を補修した。補修後、再び同じ地震力を負荷したところ、元の柱断面性能と同等以上の耐力・変形性能を維持していることを実証。補修によって、損傷で劣化した剛性が最大で約50%回復したほか、再加力の際にコンクリートと補修材の境界面に剥離は生じなかった。補修・補強後の耐火性能実験では建築基準法に定められた耐火性能(3時間)も確認した。

「コテ塗り方法」による置換


 超高層RC造建物の柱には超高強度コンクリートが使用されているが、地震などで損傷を受けた部材の補修・補強は従来の指針類で適用範囲外だった。技術的知見も十分ではなかったため、巨大地震への万が一の備えとして、補修・補強技術を確立する必要があった。

 

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