【水中ドローンで漁港点検】潜水目視より2、3割安価/いであ | 建設通信新聞Digital

5月9日 木曜日

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【水中ドローンで漁港点検】潜水目視より2、3割安価/いであ

 いであは、水産研究・教育機構、水産土木建設技術センターと共同で水中ドローンによる漁港施設水中部の点検手法を確立した。広く普及している水中ロボット2機種を選んで室内と現地で実証試験を行った結果、透明度の高い漁港では音響機器で把握できない小規模な変状を撮影することができ、潜水目視の代替として有効な技術であることを確認した。潜水士による点検との費用比較でも2、3割程度安価になると試算している。

水中ドローン画像 発錆(上)と基礎部洗堀(下)


 従来、インフラ水中部の点検は潜水士による目視で実施されてきたが、近年は潜水士の不足や高齢化が進んでいることから、効率的な潜水目視代替技術が求められている。

 いであは水中3Dスキャナーやマルチビームソナーなどの音響機器を使ったインフラ水中部の点検技術を開発し、漁港や港湾、河川、橋梁など幅広い分野で活用してきたが、音響機器では10cm未満の変状を確認することが困難であり、ひび割れ(クラック)や発錆(はっせい)、小規模な損傷などは把握できない課題があった。

 そのため、水中ドローンによる画像撮影を漁港施設点検に活用することを検討。水産庁のガイドラインに基づいた老朽化度の判定が可能かを確認するため、室内と現地で実証試験を行った。水中ドローンは、BlueRobotics社製のBlueROV(遠隔操作型無人潜水機)と、QYSEA社製のFIFISH(ファイフィッシュ)を使用した。

 実験水槽内にひび割れや開孔を模した板(変状模型)を設置した室内試験では、点検対象から1mの隔離での撮影が効率的であり、濁度が7度以下であればコンクリートの老朽化度cに相当する幅3mmのひび割れを検出できることが明らかになった。水産研究・教育機構水産技術研究所の回流水槽での試験では箱型のBlueROVは秒速0.3m、流線型のFIFISHは同0.5mまでの流速で撮影可能であることも確認した。

 一方、現地試験ではこれまで点検が実施されていない漁港施設を広く簡易点検することを想定した「面的撮影」と、過去すでに確認されている変状の経年変化を確認する詳細点検を想定した「スポット撮影」を実施した。

 このうち、面的撮影では対象となる水中構造物を連続的に撮影した水中ドローンの画像から、性能に著しい影響を及ぼす漁港施設老朽化度a、bに相当する比較的規模の大きい変状や、音響機器では確認できない発錆を確認できた。画像処理ソフトで点検対象区域全体を一枚の画像とした「結合画像」を作成することも変状の位置や経年変化を把握する上で非常に有効としている。

 詳細点検でも既知の変状の直近にスタッフ(物差し)を垂下して水中ドローンで撮影することにより、老朽化度c相当の幅1、2mmのひび割れを確認したほか、FIFISHでは搭載されているレーザースケーラーで変状の大きさを把握できた。

 同社は、これらの成果を踏まえ、簡易点検では潜水目視の代替が可能としたほか、港湾や河川、ダム、橋脚などの水中インフラ点検にも応用可能としている。今後、鋼構造物の点検で必須となる付着生物の除去(ケレン)と肉厚測定が安定的にできる新たな水中ドローンの開発や、AI(人工知能)を活用した変状箇所の自動抽出などの技術開発を進めていく考えだ。
 

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