【TOKYO-変貌し続ける都市⑤】神宮外苑エリア 100年の歴史継承、スポーツと緑楽しむ空間 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【TOKYO-変貌し続ける都市⑤】神宮外苑エリア 100年の歴史継承、スポーツと緑楽しむ空間

神宮外苑地区まちづくりの完成イメージ

 東京六大学野球などをはじめ、プロ野球・東京ヤクルトスワローズの本拠地球場として、幾多の名勝負の舞台となってきた「神宮球場」に加え、ラグビーの聖地である「秩父宮ラグビー場」や、東京オリンピック2020のメイン会場となった「国立競技場」など、さまざまなスポーツ競技でトップレベルの大会が開かれている神宮外苑エリア。その象徴となる二つの歴史あるスポーツ施設は、それぞれ1926年、47年竣工で老朽化が大きな課題となっている。こうした中、三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事の4社が手掛ける神宮外苑地区まちづくりは「スポーツを核とした神宮外苑地区の新たな100年に向け、誰もが気軽に訪れ楽しむことができる公園の再編と、広域避難場所としての防災性を高める複合型の公園まちづくり」をビジョンとして掲げている。段階的に進めるスポーツ施設建て替えは、昨年3月に着手した神宮第二球場の解体工事を皮切りに、2024年には新築着工を予定。全体完成を目指す36年には、日本を代表するスポーツの新たな聖地が誕生する。

 神宮外苑地区まちづくりは、港区北青山1丁目、2丁目、新宿区霞ヶ丘町ほかの約28.4haに及ぶ大規模まちづくりプロジェクト。緑豊かな都市景観を保全し、にぎわいあふれるスポーツの拠点をさらに発展させるもので、ポイントは▽老朽化したスポーツ施設の建て替え▽4列いちょう並木の保全▽広場や緑地などオープンスペースの整備――の3点。


■全天候型のラグビー場
 新たな野球場は、秩父宮ラグビー場がある位置に計画し、ホテルも併設され、試合以外の楽しさも満載な新たな神宮球場として生まれ変わる。また、神宮野球場と第二球場の位置に計画の国際規格に準拠した全天候型ラグビー場棟は、ラグビー以外のスポーツや、コンサート、イベントなどにも活用し、スポーツとアミューズメントの両方が楽しめる新しいにぎわいの空間となる。日本スポーツ振興センターが実施した「新秩父宮ラグビー場(仮称)整備・運営等事業」の民間事業者選定で「Scrum for 新秩父宮」を選定している。

ラグビー場棟(提供:秩父宮ラグビー場株式会社 ※計画段階のため変更の可能性がございます)

 伊藤忠商事東京本社ビルの位置には地区の拠点性を高める本社機能を備えた事務所棟を整備し、屋上・壁面など立体的な緑化空間や店舗を備えた低層棟を計画している。また、複合棟Aとして公園の自然を身近に感じられる次世代型オフィス、野球場棟に南北デッキで接続しにぎわいを創出する店舗空間、複合棟Bとして合宿・部活動・シーズンオフなどプロアマ問わず多目的に利用可能な室内球技場、競技期間中の中長期宿泊をはじめとするさまざまな利用が可能なサービスアパートメントをそれぞれ計画している。このほか、多様なアクティビティーに対応し、地区の回遊性を高める中央広場、広場をつなぎ、交流を促進する文化交流施設を整備し、隣接するスポーツ施設と一体となったイベントを開催する。聖徳記念絵画館前エリアはかつての広場の再生と新たな交流の場を創出し、当初の設計思想などを受け継ぎ、いちょう並木から絵画館を見通す景観を再生する。スポーツ施設は28年までに第二球場解体からラグビー場棟建設(I期)、32年までに秩父宮ラグビー場解体からホテル併設野球場棟建設、36年までに神宮球場解体と中央公園などの整備を進める。


■緑の未来をつくる
 同プロジェクトでは、4列のいちょう並木の保全も大きなポイントの一つ。神宮外苑地区のシンボルである4列のいちょう並木をはじめとした豊かなみどりの保全・継承と新たな樹林地の創造により、地区を南北に貫く「みどりの散策路」を整備する。100年前の記憶をそのままに残す聖徳記念絵画館前の広場を再生するとともに、風格ある象徴的な景観を次世代に継承し、過去と未来が融合する場所を創出する。

 さらに、広場や緑地などのオープンスペースの整備と青山通りの機能の複合・高度化として、地区内の回遊性を高めるとともに、さまざまなイベントを実施し、にぎわい醸成する。避難場所としての活用による防災性を向上させる。
 樹木の取り扱いについては、いちょう並木の保全のほか、豊かなみどりを継承するため、専門家の意見も取り入れながら慎重に進めていく。エリア全体の樹木数は、既存の1904本から約2000本に増加する。さらに、神宮外苑の新たなみどりの創造に向けた樹木購入の賛助金募集や、「親子でどんぐりを拾おう!in神宮外苑」など自然と触れ合うイベントを地域とともに取り組んでいる。

 事業対象地区は、大正期に整備された神宮外苑の都市構造を基盤として、風格ある都市景観と苑内の樹林による豊かな自然環境を備えている。近年では、国立競技場のほか、日本スポーツ協会(JSPO)、日本オリンピック委員会(JOC)の本部ビルである「ジャパン・スポーツ・オリンピック・スクエア」が19年に完成している。スポーツ施設の建て替えを契機とした新たなまちづくりは、100年の刻を重ね、神宮外苑が紡いできたテーマ「みどり」「スポーツ」「歴史・文化」が、オープンに融合、一体化することでさまざまな“鼓動”が生まれる場所に生まれ変わる。

完成前

完成後




















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