内装ディスプレイ大手の船場が、BIMを基盤にしたデジタルプラットフォームの構築に向け、大きくかじを切った。BIMを経営情報のツールに位置付け、蓄積したデータからプロジェクトの進捗(しんちょく)状況をリアルタイムに見える化し、事業戦略と密接に結び付けることが狙い。今年1月には組織のつなぎ役としてBIM CONNECT本部を立ち上げた。同社のBIM活用はどこに向かおうとしているか。道筋をたどった。
同社は2019年からのBIM導入を機に、オートデスクのBIMソフト『Revit』の全社展開に踏み切った。当初は思うように普及が進まなかったが、22年12月期からの現行3カ年中期経営計画でBIMを設計業務のメインツールに位置付け、最終24年12月までに設計職の70%以上が基本技術を習得する目標を掲げたことで、社内の風向きが大きく変わった。
秋山弘明取締役執行役員コーポレート担当は「現在は既に設計職の74%が基礎教育を完了した。組織としてのBIMスキルは着実に高まっている。次のステップとしてBIMを軸としたワークフロー改革を推し進め、事業戦略とBIMをしっかりと結び付けていく」と説明する。
重要視するのは、BIM関連情報の見える化だ。プロジェクトの導入状況や教育の進捗など全ての情報をリアルタイムにモニタリングし、業務効率や品質確保につなげ、蓄積したデータを新たなビジネスにも展開する。「今後はBIMを経営情報のツールとして積極的に活用する」と力を込める。これまでDX本部に置いていたBIM推進部門をBIM CONNECT本部に昇格し、各部門をつなぐ横断組織として位置付けた。
多喜井豊執行役員BIM CONNECT本部長は「ビジネス戦略を踏まえながら社内外にBIMをコネクトすることがわれわれの使命」と強調する。BIMデータの共有基盤にオートデスクの建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』を位置付けるとともに、営業支援や顧客管理に活用するクラウドツール『Salesforce』とACCを連携させることで、BIMと事業戦略を密接につなぐ枠組みも構築した。
BIMによるプレゼンテーション件数は22年12月期に123件、23年12月期に148件と右肩上がりに推移し、24年12月期は200件を見込む。BIM CONNECT本部が支援する実案件は月20件ほどに達する。これまで設計部門が主体的にBIMの導入を進めてきたため、全体の状況把握が難しかった。本部の発足に合わせ、Revitで設計し、そのデータをACC内で共有する流れを確立した。BIM導入時に本部への申請をルール化することで、全体の管理が円滑に進むようになった。
プロジェクトが始動するタイミングで、BIM CONNECT本部はACC内に作業環境の場を用意し、参加メンバーにACCの権限を与えている。多喜井氏は「関係者が集い、情報共有する流れが定着し始めている。情報の流れを整えたことで、これまで“点”だったBIMの動きが“線”になり、今後は“面”として各部門がBIMデータを軸に回り始める」と先を見据えている。
BIMと事業戦略をどう結び付けるか。同社では重点顧客や注力分野の対応強化に向けて、BIMデータを効率的に活用するための仕組みも動き出した。