BIMによるプロジェクト活用件数として2024年12月期に200件を見込む船場では実案件へのBIM導入が着実に高まりを見せており、BIM CONNECT本部が各部門とのつなぎ役として機能し始めている。同本部の大倉佑介戦略企画部長は「BIMの流れを見える化し、それをきちんと標準化することを重要視してきた。これからはBIMデータを効果的に使うためのフェーズに入る」と、手応えを口にする。
同社はCDE(共通データ環境)構築に向け、オートデスクの建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』を位置付け、各プロジェクトにおける情報共有の流れを一元的に管理し始めた。設計担当の7割に当たる規模のライセンスを確保し、このうちの約40%に共同設計ツール『BIM Collaborate Pro』の利用環境も整えた。
BIMの導入拡大に呼応するように、受注プロジェクトの規模も大型化しており、設計チーム内の共同作業も増えている。照明メーカーを筆頭にBIM対応を推し進めるプロジェクト関係者も増えており、社外ともACCを基盤にデータを共有する流れが出てきた。「どの情報が最新であるかを常に把握することが大切になる。今後を見据えてワークシェアリングの枠組みをしっかりと標準化していく」と強調する。
例えば23年12月にリニューアルを完了した同社九州支店はBIMワークシェアリングを進めた事例の一つだ。全体を4ゾーンに区分けし、それぞれに設計担当を充て、一つのモデルにアクセスしながら同時並行で設計を進めた。社内では進化し続けることをコンセプトにした「ハッカブル」なオフィスづくりを掲げており、先行した東京本社や関西支店のリニューアルでもBIM対応を推し進めてきた。野畠滉戦略企画部チーフは「家具や備品の情報まで細かくBIMのデータベースに入れ、リニューアルに際して家具をベンチやキャビネットなど他の用途にアップサイクルする際にも利活用している」と付け加える。
同社がBIM導入にかじを切ったのは5年前。店舗系では5~7年で内装のリニューアルを実施するケースが多い。BIM導入当初に取り組んだプロジェクトでは今後、リニューアル時期を迎える案件も出てくる。大倉氏は「われわれ内装工事業にとってBIMデータは次のリニューアルにつなげる上での貴重な情報でもある。FM展開も見据えたBIMの活用についても具体化していきたい」と強調する。
環境配慮に向けて社を挙げて取り組むエシカルデザインとも、BIMは密接に連携している。現行中期経営計画では「エシカルとデジタル」を重点テーマに掲げており、実プロジェクトを通して環境への貢献度を見える化している。内装工事の廃材を極力なくすだけでなく、使用材料も環境を配慮したエシカルマテリアルを認定し、その詳細な情報をBIMのデータベースに組み込むことで、設計時に環境配慮空間の最適解を導くことを検討している。
エシカルマテリアルは約100社の建材・原材料メーカーから情報を収集し、地球環境、資源循環、人・社会、意匠・経済の視点から独自の基準を設けて選定している。リサイクル方法や再生資源の活用方法まで含め、ライフサイクルを通じて最適な材料を選定することが特徴だ。多喜井豊執行役員BIM CONNECT本部長は「BIMを軸にエシカルとデジタルを融合し、付加価値の追求とともに、新たなビジネスの扉も開いていく。当社はBIMデータを社内だけでなく、社外にもコネクトしていくフェイズに入った」と力を込める。