【BIM/CIM LIVE 第17回③】鴻池組 大日本ダイヤコンサルタント | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM LIVE 第17回③】鴻池組 大日本ダイヤコンサルタント

鴻池組
建築技術本部ICT・BIM戦略部ICT推進課課長
波多野 純氏
技術研究所つくばテクノセンター研究員
北川 大祐氏

波多野氏

北川氏

【人手不足解消に四足歩行ロボ】
 現在の建設業界は人手不足が深刻であり、解決策として、現場にロボットを導入する流れは避けられない。鴻池組では、ノウハウのない状態からロボット導入を開始した。社内のロボットサブワーキンググループ(SWG)のメンバーで、小規模なロボット制御・開発を行い、ノウハウを得て、現場に導入した。

 ROS(ロボット・オペレーティング・システム)を搭載した台車ロボットにより、SLAM(自己位置推定)技術を活用した走行テストを実施した。ロボット自身がどこにいるのかを把握し、地図を拡張する実験を行った。さらに免震ピットで採った3Dの点群データをもとに、地図を作成した。

 実験の過程で、開発にはかなりの時間を要することや、ロボットの現場導入には制御ソフトの外注は必須となることが分かった。

 これらを踏まえ、現場の人手不足解消を目的とし、大阪・関西万博のナショナルデーホールの現場に四足歩行ロボットを導入した。不整地などの安定走行や、制限荷重を考慮し、Unitree社製の犬型四足歩行ロボット「Unitree BI」を採用し、定期現場巡察に活用した。遠隔操作の手元の映像がやや不安定となるため、現場に強力なインターネット環境を構築することにした。

 四足歩行ロボットは、社内アンケートにより「心/KOCoRo」と名付けた。ロボットの背中に、制御機能を持つアプリ「iVoRi XR」をインストールしたiPad Proと、360度映像のリアル配信機能があるアプリ「Nossa360」専用のカメラを設置した。高速な映像伝送により、手元の画面だけで十分に操作できることを確認した。

 「iVoRi XR」を用いることで、遠隔操作による映像共有や音声通話、iPadの画面操作、走行ルートや撮影ポイントの管理を可能した。また、「Nossa360」は、現場の状況をリアルタイムに配信でき、目視外のロボット操作に有効である。

 今後の展望として、現場内の各所センターからのデータ吸出しなど、機能を追加する。さらに現場から要望をもとに、会話用スピーカーの追加や操作性の向上など、改良に取り組む。

四足歩行ロボの操縦




大日本ダイヤコンサルタント
管理本部情報システム部情報システム室主幹
浅野 善昭氏

浅野氏

【実施計画書には活用例の記載を】
 これからBIM/CIMに取り組む方、まだ経験の浅い方に向けてお話しする。基本的なことだが、国交省や自治体が策定している特記仕様書、実施方針、要領を熟読すること。特に自治体の場合は、自治体が独自に出している方針も確認しておく。その上で、BIM/CIM活用ガイドライン(案)の確認、特にモデルの詳細度、サーフェスとソリッドの違い、モデルの分類は覚えておくとよい。

 次に発注者との初回協議に向けて、全体を統括する者、3次元モデル作成調整者、3次元モデル照査責任者、社内のCADオペレータなど担当者を事前に決めていく。場合によっては、協力業者の必要性についても協議しなければならないからだ。

 発注者と受注者、双方の経験が浅い場合、初回協議で起こりうる一例を挙げておく。橋梁の予備設計でBIM/CIMを活用する場合、発注者から、住民説明に活用したいので詳細度400を求められ、そのまま受注者が応じてしまうと、明らかなオーバースペックになってしまう。

 受注者は、詳細度を200程度に落とし、住民説明が目的であれば地形形状に航空写真を貼り付けて、周辺建物の簡易モデルを示し、ここに橋梁ができると分かる程度の3Dモデルを作成することを提案するのが正解だ。

 追加で、詳細箇所の測量をしていれば測量データの貸与をお願いし、3次元測量をしているならそのデータの活用をさせていただく旨、伝えるとよい。自治体担当者の経験が浅い、もしくは初めてのケースは全国的にあることなので、実施計画書にBIM/CIMの活用例も含めて記載しておくことをお勧めする。

 ある程度経験を積み、先導的な活用試行に取り組むようになれば、次のことに留意していただきたい。まずは、自分がBIM/CIMを牽引しているという誇りをもって対応すること。結果に対する課題や対応策を提示し、現状を正確に分析することはとても大事である。

 一つのソフトのある機能を使えば解決するとしても、それが全てであると考えてはいけない。過大な評価は禁物である。また、積み重ねてきた付き合いや人脈は財産なので、大切にしてほしい。




【11日に18回セミナー/HPで受付スタート】
日刊建設通信新聞社は10月11日午後1時から、ウェブセミナー「BIM/CIM LIVE」の第18回を開催します。聴講は無料ですが、事前の参加登録が必要となります。当社ホームページよりお申し込みください。

主催:日刊建設通信新聞社
共催:土木学会土木情報学委員会、NPOグリーンアース、北海道産学官研究フォーラム
後援:国土交通省、日本建設情報総合センター
建設コンサルタンツ協会
日本建設業連合会



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