建設プロジェクトのCDE(共通データ環境)を実現するクラウドプラットフォーム『Catenda Hub』を提供するカテンダは、8月末に日本法人を設立した。日本の代表も務めるホーバル・ベルCSO(最高戦略責任者)は「今後は日本拠点を足掛かりにアジア各国にも進出していくが、まずは『openBIM』の流れが広がろうとしている日本市場の開拓を最重要視する」と強調する。
現在のプロジェクト導入数は世界各国で年間5000件を超えるが、日本企業は既に全体の17%を占めている。ベル氏は「今はゼネコンが中心となり、建築設計事務所や建設コンサルタントなどには広がっていないが、いずれ海外と同様に、施主も含め多様な分野への導入を推し進めていきたい」と力を込める。
そこには日本国内のBIMプロジェクトが高度化し、CDE構築の流れがゼネコン以外にも広がっていることが背景にある。平野雅之マーケティングマネージャーは「コミュニケーションの仕方が従来と大きく異なる点を理解してもらうことこそが、CDE構築の出発点になる」と説明する。従来は電子メールで関係者同士が連絡を取り合ってきたが、担当者は複数のプロジェクトに関わっており、それを電子メールだけでやり取りするには限界がある。
例えばCatenda Hubのコミュニケーション機能を使えば、関係者同士がプラットフォーム上でBIMモデルを見ながらリアルタイムに密なやり取りができ、情報共有のスピードや正確性も格段に増す。最近導入が広がるコラボレーションツールとのシステム連携も実現しており、プラットフォーム上で会議アプリ「Teams(チームズ)」などのやり取りも可能だ。海外ユーザーの中にはコミュニケーション機能を使うことで月50時間程度の時短を実現したケースもあるという。
IFCモデル上でコメントや画像などを交換するBCF(BIMコラボレーションフォーマット)形式にも対応している点も強みの一つだ。川井達朗カスタマーサクセスマネージャーは「BCF連携によってBIMモデルを軸に関係者の円滑なコミュニケーションが実現し、誰もが知りたい情報をプラットフォーム上で見える化できるようになった」と語る。
誰もが気軽につながり合うopenBIMの流れは今後、日本国内に定着できるか。平野氏は「CDEの構築と聞いて及び腰になってしまう企業もあるかもしれないが、BIMを軸に業務を進めている企業であれば違和感なく一歩を踏み出せる」と呼び掛ける。Catenda Hubはクラウドプラットフォームであり、プロジェクト関係者それぞれが使うソフトから出力したIFCデータで情報共有していくため、「関係者間でデータ連携の枠組みを一から構築する必要もない」と付け加える。
openBIM環境を構築する上で、重要なのは「プロジェクト関係者間でアクセス権限をあらかじめ設定する部分」と川井氏は説明する。企業としてCatenda Hubを全面導入する際も同様だ。社内のワークフローに基づいて関係者の権限を位置付けることが必要にはなるが、「現行の枠組みをそのまま当てはめられる導入のしやすさがCatenda Hubの特徴」と強調する。
海外では建設会社にとどまらず、施主がプロジェクトを運用管理するプラットフォームとしてCatenda Hubを位置付けるケースも増えている。ベル氏は「BIMワークフローをFM(ファシリティ・マネジメント)にもつなげていく流れが海外では増えている。オランダのアムステルダム・スキポール空港も、その代表的な事例の一つ」と明かす。