◇新線整備の“協力”条件に完全民営化へ前進
A 東京メトロが23日に株式上場を果たした。改めて今回の背景は何なのかな。
B 株式上場が決定的となったのは2021年の交通政策審議会による国土交通相への答申だ。東京圏地下鉄ネットワークの在り方を議論してきた同審議会で、東京メトロの有楽町線豊洲駅と半蔵門線住吉駅を結ぶ「東京8号線の延伸」、南北線白金高輪駅から品川駅へ分岐する「都心部・品川地下鉄構想」の早期事業化が示された。そして、その中で東京メトロへの協力が求められた。
A 各線ともに東京メトロが運営主体なのだから、自然なように思えるけどそれがどう上場につながるの。
B 当時、東京メトロは有価証券報告書で「副都心線を最後として、今後は新線建設を行わない方針」と明記し、さらに新線整備の協力を求められた場合であっても「経営に悪影響を及ぼさない範囲内で行う」とのスタンスを示していた。結果として、東京都や地元区による整備要望とは平行線をたどっていた。その解決策として、新線整備への“協力”の交換条件として、東京メトロが目指してきた完全民営化に向けた上場を国が答申で示した格好だ。
C 新線整備と民営化、資金獲得とまさに一石三鳥といったところか。長期的に安定収入が見込める都心部の路線だけあって、IPO(新規公開株式)にも注目が集まった。これまで国が53.4%、都が46.6%を保有してきたが、それぞれその半分を売り出し、売り出し総額は3486億円は上った。株価もまずまずの滑り出しとなったようだ。
B 鉄道にどどまらず、インフラ事業において、稼げるセクターは自分で稼いで整備・運営してもらうという潮流はますます強まりそうだ。
◇スタートアップによる新事業創出に期待
A ところで愛知県が取り組むスタートアップ(新興企業)支援プロジェクトの中核を担う「STATION Ai(ステーション・エーアイ)」が31日に名古屋市で開業する。
D 日本最大級のオープンイノベーション拠点として、スタートアップの創出育成とオープンイノベーションの促進を目的にさまざまな支援を提供する。日本経済をけん引する産業の集積地である東海エリアの既存産業と、スタートアップが展開する新事業が融合することで新しい事業の創出が期待できそうだ。
E 施工でも、施設の開業に先駆けて同市のWeWorkグローバルゲート名古屋に開設したスタートアップ支援拠点「PRE-STATION Ai(プレステーション・エーアイ)」に入居する企業が開発した技術を実験的に採用した。
A 建設業に関連している同施設の登録企業はあるのか。
E インド建設人材還流プラットフォーム形成事業に取り組むアイティップス(名古屋市)がある。この事業では、インドの建設人材を日本企業と結びつけ、活躍する姿を発信することで外国人材を集め、愛知県に国際的な経済活動拠点を形成することを目指している。愛知県国家戦略特別区域区域計画案にも盛り込まれ、16日の県国家戦略特別区域会議で計画案が了承されている。
D 人手不足が業界課題となっている中で、外国人材の採用が活発化している。支援事業の展開は東海エリアに限らず業界にとって関心を集めるだろう。
A 人手不足以外にも業界課題は山積している。課題解決につながる新事業の創出や新技術の開発に取り組むスタートアップには引き続き注目していきたいね。