【データがひらく未来】AU2024inサンディエゴ⑤ BIMモデル共有 国境超え連携/新ライフサイエンス拠点を見学 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【データがひらく未来】AU2024inサンディエゴ⑤ BIMモデル共有 国境超え連携/新ライフサイエンス拠点を見学

 Autodesk University(AU)2024では、米国大手建築事務所「ゲンスラー」が設計を手掛けた大規模複合施設の見学会が、メディア向けに開かれた。米国カリフォルニア州サンディエゴの中心市街地約4万㎡の敷地に、ライフスタイルと生命化学が融合した新たなまちを生み出すプロジェクトで、見学した10月中旬には大部分が完成していた。プロジェクトではBIMソフト「Revit」を使用。クラウドを使用して関係者間でBIMモデルを共有することで、効率的なプロジェクト進行を実現した。

 このまちづくりの関係者数は膨大で、ゲンスラーチームは100人以上を数え、コンサルタントも10社以上に上った。州や国も複数にまたがる巨大なチームだったため、クラウド上でBIMモデルを共有。クライアントもモデルにアクセスできるようにし、形状や素材、色などが完全に再現された外観などのイメージを随時確認できるようにした。

 モデルには建設材料・数量が追跡できるシステムも組み込んだことで、クライアントに対して予算内でプロジェクトが進行していることを保証できた。工事請負業者も予算編成作業の一部にそのデータを利用できるシステムだという。

 モデルは設計、施工時だけでなく、施設オーナーにも引き継ぎ、資産運用に役立てている。

まちづくりのイメージ模型


 ゲンスラー担当者は「クラウドベースのコラボレーション方式を採用したことで、関係者全員が共通認識を持ちながら作業できた。非常に役立った」と振り返るとともに、「この方式が標準になることを期待している」と話す。

 敷地内の施設配置は、海側に向かうほどビルの高さが高くなるようにし、スカイラインを意識した。環境面にもこだわり、米国の環境認証制度「LEED」ゴールドをはじめ、さまざまな環境認証を取得するなど、カーボンニュートラル目標を達成できるように設計。太陽光発電を設置し、レストラン以外はオール電化対応した。敷地内空地だけでなく、施設の屋上など随所に緑化空間を設け、緑が感じられる気持ちの良い空間を創出した。

 敷地内にはアート作品を展示。20程度の壁画や五つの彫刻をつくり上げる過程では、アーティストと連携し、「公共空間やインフラの一部として芸術をどのように解釈するか熟考を重ねた」とゲンスラー担当者は話す。

 これらの取り組みにより、サンディエゴの新たなランドマークとなるライフサイエンス拠点を生み出した。

 AUを通じ、来場者はデジタル技術の導入へ思いを新たにした。オートデスクのエリザベス・ゾーンズチーフカスタマーオフィサーが「いま私たちはユニークな地点に立っている」と表現するその意味は、「デジタル技術を使うことで持続可能性の実現に大きなインパクトを与えられる」ということだ。今後、「デジタル技術に多くの投資をした企業が競争力を高めていける」と未来を展望する。

施設内にもアート空間が広がる



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