KAPと実寸法師の連携進化
日本ファブテックの鉄骨専用CAD『KAPシステム』と、タイワの鉄骨汎用CAD『実寸法師』による双方向のデータ連携環境が、鉄骨ファブリケーターの生産性向上を下支えしている。日本ファブテックの播磨裕敏KAP・EGリング事業部長と、タイワの近藤健司社長は「関係性をさらに強固にしていく」と口をそろえる。両ソフトの密なデータ連携が目指す先にはBIMデータ活用への期待が広がる。
ユーザーは、KAPで柱や梁などの主要部材をモデル化し、それを2次元データとして実寸法師に流し、二次部材などの細かな部分を微調整する。鉄骨工事では設計変更が頻繁にある。相互のデータ連携が実現したことで、実寸法師の修正部材データを迅速にKAP側に戻すことが可能になり、円滑な変更作業が実現している。
密な連携は汎用CADと専用CADという両ソフトの棲み分けが明確にできているため、ユーザー側が作業によってきちんと使い分けができている点が相互の関係性を強めている。近藤氏は「それぞれの役割が明確に異なることが相互に補完し合える関係になっている」と強調する。播磨氏も「一連の作業をそれぞれが分担して進められる関係性が相乗効果になっている」と付け加える。
国内の鉄骨専用CADベンダーは7社ほどに達する。タイワにとっては汎用CADベンダーとして各ソフトとデータ連携の環境を整えているが、近藤氏は「システム面の相性が良いKAPとは最も密接なシステム連携を実現している」という。営業展開についても二人三脚の関係性を構築しており、08年の連携に踏み切った当時から展示会などでも隣合ってブースを出展してきた。日本ファブテックが現在、全国各地区で定期開催するユーザー会にはタイワの担当者が出席し、KAPと実寸法師のデータ連携関係について解説している。日本ファブテックKAPシステム部システム営業課の川筋紳平主任は「一緒にユーザーのもとに訪問し、システム連携の効果を説明する機会が増えている」という。
そうした地道な営業活動を通して、両社はユーザーの生の声を積極的に集めている。近年は「実寸法師からKAPに戻すデータの項目をもっと増やしてほしいとの要望が多くあり、両ソフトをもっと効果的に活用していきたいというニーズが着実に広がっている」(川筋氏)状況だ。
鉄骨ファブリケーターでは、元請であるゼネコンがBIMに舵を切る動きを見据え、BIMデータを効果的に活用したいとの思いが広がっている。両社もBIMデータを効果的に活用できる流れを確立したいと、それぞれの視点から機能強化を推し進めている。
日本ファブテックは専用CADベンダーの中でも先行してBIM対応を確立してきた。最近は作業効率化の機能強化として、主要構造の自動配置機能を拡充し、パラメータに値を入力するだけで部材の自動生成を可能にしている。タイワは実寸法師のデータを工場製作や出荷管理にもつなげるシステム開発を進めており、近く新機能をリリースする予定だ。荷姿作成の最適化にもデータを活用することで加工から発送までを一貫して実現できる青写真を描く。
播磨氏は「実寸法師で修正した部材データをKAPに反映する流れを確立しているが、その鉄骨モデルを設計変更に応じて承認するプロセスがまだ整っていない」と明かす。近藤氏は「いまはまだBIM対応が負担でも、それがいずれメリットになれば、鉄骨ファブリケーターの大幅な生産合理化が実現する」と確信している。密接な連携関係にある両社の結びつきは、BIMの進展を見据え、さらなる進化を生もうとしている。