北海道新幹線延伸/開業38年度末に遅れ/有識者会議が報告書/国交省 | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

行政

北海道新幹線延伸/開業38年度末に遅れ/有識者会議が報告書/国交省

中野国交相(左)に報    告書を手渡す森地座長
 国土交通省の有識者会議は14日、北海道新幹線新函館北斗~札幌間の開業時期が2038年度末ごろになる見通しを盛り込んだ報告書をまとめた。トンネル工事の難航が主な要因で、今後も工程に影響するリスクが発生した場合は数年単位で遅れる可能性があるとした。トンネル貫通のめどが立った段階で改めて開業時期を定めることが適切と提言した。 北海道新幹線新函館北斗~札幌間の整備を巡っては、渡島、羊蹄、札樽の3トンネルで地質不良や岩塊の出現、対策土の受け入れ場所の不足などにより工事が難航。建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が24年5月、目標としていた30年度末の開業は困難と国交省に報告したことを受け、有識者会議で新たな開業時期を検討してきた。
 報告書では現在の工程遅延に加え、今後の見込みを考慮すると、30年度末開業を困難とする機構の報告は合理的とした。開業時期を決定づける渡島トンネル台場山工区について、地質不良や建設業の時間外労働の上限規制の影響などにより、工区境変更などの工程短縮策を講じても約8年遅れると見込んだ。今後の対応として、物価高騰や工程遅延が事業費に与える影響の注視、沿線自治体との工事進捗(しんちょく)の随時共有などを求めた。
 同日に「北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)の整備に関する有識者会議」の座長を務める森地茂政策研究大学院大名誉教授が中野洋昌国交相に報告書を提出した。報告を受け中野国交相は機構に対し、沿線自治体など関係者と一丸となって一日も早い開業を目指すことなどを指示した。
 報告後、取材に応じた森地座長は「トンネル開通のめどが立った段階でもう1回全体を見直して、いつ開業できるかを報告することが重要になる」と述べた。機構の藤田耕三理事長は、トンネル貫通について3-5年程度で一定のめどが立つとした上で「今後も大変厳しい自然・社会状況の中での工事となるが、全力を挙げて早期開業に向けて取り組む」と話した。