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5月2日 金曜日

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【記者座談会】北海道新幹線札幌延伸が38年度末に/北陸新幹線は開業10周年

◇想定外の難工事 事業費、まちづくりに影響大

中野国交相(左)に報告書を提出する森地座長。有識者会議では現地視察なども実施し、工程短縮策や開業見通しを議論してきた


A 北海道新幹線の札幌延伸を巡って、大きな動きがあったね。

B 国土交通省の有識者会議が新函館北斗~札幌間の開業見通しを2038年度末とする報告書をまとめた。トンネル工事が地質不良などで難航していることが主因で、これまでの開業目標の30年度末から8年遅れることになる。

C 有識者会議座長の森地茂政策研究大学院大名誉教授は「今まで新幹線を整備した場所の多くは先に高速道路を整備しており情報量が異なる。あれほど大きな岩が出てきたり、これほどの膨張性は想定外」とその難しさを話していた。

D 一方、報告書で示された開業見通しはあくまでも有識者会議としての見解だ。国に対しては、トンネル貫通のめどが立った段階で開業時期を定めることが適切と提言した。建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構の藤田耕三理事長は3-5年後にめどが立つとしている。

C 事業費については物価高騰や工程遅延による影響を注視する必要があるとしている。現下の情勢を踏まえると、約2.3兆円の総事業費はさらに膨らむ恐れがある。

D 新駅周辺のまちづくりや再開発は提示された開業時期を前提に進んでいるため、そこが遅れてしまうと民間投資が停滞する可能性も出てくる。

B 鈴木直道北海道知事は18日の会見で開業の遅れによって多方面への影響が懸念されるとして「政府全体で影響を把握して対策を講じなければならない」と訴えた。影響の最小化に向け、4月上旬にも中野洋昌国交相に緊急要望をする考えだという。

C 鈴木知事が言うとおり札幌延伸は道民の悲願だ。1日も早い開業へ、さらなる英知の結集が求められている。

◇観光、人流に効果も大阪延伸は先行き見通せず

A 一方、北陸新幹線の長野~金沢間が14日に開業10周年、金沢~敦賀間は16日に延伸開業1周年を迎えた。各地で開かれた周年イベントも盛り上がりを見せていた。

E 首都圏から北陸へのアクセスが大幅に向上したことで訪日外国人客や観光客が増加し、駅周辺の開発も進んだ。ただ、この効果をどう波及させるかが課題となっている。

F 沿線の主要都市は地価が上がるなど目に見えて変化があった一方、効果が感じられていない地域や業種もあるという。特に駅から離れた地域に人流を生み出すことが課題だ。自治体も消費喚起のイベントやなどに取り組んでいるが、一時的なもので終わらせてはいけない。

A 敦賀~新大阪間は与党のプロジェクトチームが25年度の着工を断念したけど、見通しはどうだろう。

E 先行きは不透明だ。資材の高騰による財政負担はもちろん、沿線自治体からは地下水への影響が懸念されている。さらに採用が決定されている「小浜・京都ルート」よりも建設費が抑えられ、工期も短い「米原ルート」を再考すべきとの声も上がっている。

F 並行在来線の問題も解決していない。小浜・京都ルートでは、琵琶湖沿岸を走る湖西線が並行在来線となり、JR西日本の経営から切り離される懸念がある。路線を継続する場合、沿線自治体などで構成する第3セクターが運営を引き継ぐのだが、三日月大造滋賀県知事は、ルート上から滋賀県が外れているため「県内に並行在来線は存在しない」と主張している。

B 今月25日には国交省が京都府域を対象とした北陸新幹線の整備に関する説明会を開催する。前進に向けた糸口を見つけたいところだ。

 

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