【前例なきコロナ対応 20年度を振り返る(中)】7都県で普建費減少、強靱予算に関心 | 建設通信新聞Digital

4月18日 木曜日

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【前例なきコロナ対応 20年度を振り返る(中)】7都県で普建費減少、強靱予算に関心

 2021年度は、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた初めての予算となった。感染対策費や飲食店などへの支援費としての予算配分が急務となり、財政調整基金の取り崩しや公債の発行を余儀なくされた自治体がある。自治体の財政のみならず、民間投資も先行きが不透明となる中、建設業界ではこれまで以上に公共事業費の増減に注目が集まった。日刊建設通信新聞社が関東甲信9都県の21年度予算を調べると、7都県で普通建設事業費が減少していた。一方で、21年度分は補正予算で計上された国土強靱化関連予算の次年度以降の動向にも関心が寄せられている。

 21年度予算では、9都県のすべてで一般会計が増加したものの、茨城、栃木、群馬、千葉、東京、山梨、長野の7都県で普通建設事業費は減少した。ただ、新型コロナが必ずしも主な減少要因としては挙がっていない。

9都県の21年度当初予算

◆減少要因はコロナ禍以外で多様化
 個別に見ると、東京都の普通建設事業費は10%以上の落ち込みで、7年ぶりに1兆円台を下回る低水準となった。財務主計部予算第三課の担当者は「幹線道路整備などの事業進捗に伴い、用地取得費などが減少した」とした上で「社会インフラの整備は、必要なものはやっていく。既存の事業や工事などの凍結はしていない」と説明する。

 千葉県は3月に知事選を控えていたことから、骨格予算を編成。一般会計は8年連続過去最大の規模となったものの、4年連続で右肩上がりだった普通建設事業費は30%以上減少した。

 県は6月補正予算での肉付け後、当初と6月補正を合わせた予算額を20年度と比較して、政策的経費も加えた予算規模の増減を見極めていく考えだ。

 長野県も普通建設事業費が約30%減少した。19年東日本台風災害からの復旧・復興の進捗、美術館や県民文化会館の施設整備が一段落したことなどを減少要因としている。

 一方、神奈川県と埼玉県はいずれも一般会計、普通建設事業費ともに増加した。神奈川県は、不急の建設事業として庁舎車庫新築工事や球技場天然芝改修工事を中止。ただし、風水害対策や緊急輸送に不可欠な幹線道路の整備は重点的な取り組みとして予算を計上した。県有施設長寿命化の修繕などを増加要因としている埼玉県も「投資的経費へのコロナ禍の影響は特にない」(県担当者)と話す。

◆国土強靱補正予算にばらつき
 公共事業量の確保に向けては、政府の後押しもある。20年12月、政府は21年度から25年度を計画期間とする「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を閣議決定した。民間投資や財政投融資の活用を含め、15兆円程度を配分する内容だ。

 ただ、加速化対策の初年度分となった20年度第3次補正予算では、際立った減少を示した自治体もある。さらにその主な要因は、新型コロナによるものだった。

 国土交通省関係の20年度第3次補正予算のうち、補助事業等配分額(事業費)を19年度補正予算(20年1月30日成立)と比較した。その結果、47都道府県の合計では103%増と大幅に増加している中、群馬県は64%減の81億4200万円と、全国で唯一減少したのだ。同県担当者によると「新型コロナの影響で税収減とともにコロナ対応に歳出増が見込まれている」などの理由から公共事業費を抑制せざるを得ない状況で、21年度予算も同様の傾向となったという。

 未だ感染収束への道筋が見通せない中、長期的に見て建設業界がその煽りを受ける可能性は否定できない。安定した公共施設整備事業量の確保には、翌年度以降の前例となる当初予算で公共投資額を十分に確保することなどが重要になる。業界からの要望・陳情活動は今後も白熱しそうだ。



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