東京都江東区のEARTH+GALLERYを会場に、18日に開幕した「続・Tokyo Metabolizing展」のオープニングシンポジウムで北山氏は、「明治維新は日本という国家のシステムをヨーロッパ文明の社会システムに切り替えた切断面であり、この切断面によって鏡面のように江戸と東京を比較することもできるが、同時に江戸と東京を横断することによって新しい都市文明のコンセプトが創造できる可能性がある」と強調した。
江戸からつながる東京の都市としての文脈については「建物という実体ではなく、それを支えている地形や、それに応答してつくられた基盤構造、街割りにある」とし、「建物と建物の間に生まれるすき間、ヴォイドに注目すると、地割りや道路パターンがつくられる江戸東京の都市構造を読み取ることができる」と指摘した。
さらに「平均寿命26年」の戸建て住宅を中心とした「粒状」の都市構造について「大きな権力ではなく、小さな家を所有する人たちの意思で変わる、ある種民主的な都市」とした上で、木密市街地の最奥部に生じやすい「空き地空き家」に壁を挿入し、建築ではないパブリックな場、コモンズにつくりかえていく「ヴォイド・インフラ」の提案について説明した。
今回の展示では西小山(目黒区)をケーススタディーに、ヴォイド・インフラに接続する家屋の建て替え計画を模型上で展開する。実際に複数の建築家に依頼しており、現実の法規に従いながら会期中、共同建て替えを進めていく。ヴォイド・インフラを中庭とする新しい共同形式を持った建築タイポロジーを誘導することによって、多様な様相を持った民主的都市の登場を観察することができるとしている。
こうした提案に対し、東工大教授で建築家の塚本由晴氏は「都市郊外にある戸建て住宅地の建て替えは完全に個人、家族のイニシアチブに任されており、第1世代から第2世代、第3世代へと移り変わっていくにつれてどんどん家族に純化し内向化していく。その変化は寛容さを欠いていく歴史ではないか」との認識を示しながら、「いま第4世代に入っていく中で、前提そのものをどうつくっていくかが問われる」とし、(1)家族ではない人がいてもいい家づくり(2)家の外で暮らす機会を増やす(3)すき間を最初から取り込んだ設計--の3点を「第4世代の前提として設計している」などと語った。
シンポジウムで基調講演した陣内センター長は、江戸東京学の特質を「総合性にある」とし、「日本独特の都市が持つユニークさを解明していくことは、江戸を越えて古代・中世の原風景を再考することにもなる。エリアとしても多摩、武蔵野、東側の低地すべてを含む」とした上で「欧米とは異なる位相とその背景を探る」ことの意義を強調した。
法大と東工大、横浜国大の3大学が協同して近未来の「居住都市・東京」の像を描く展示会は3月4日まで。