【BIM未来図】三菱地所設計② デジタルデザインの進展を意識/竣工後を見据えモデル構築 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【BIM未来図】三菱地所設計② デジタルデザインの進展を意識/竣工後を見据えモデル構築

 三菱地所が東京・常盤橋で開発を進める「TOKYO TORCH」(大手町二丁目常盤橋地区第一種市街地再開発事業)では2021年6月に「常盤橋タワー」、22年3月に「銭瓶町ビルディング」が完成し、23年9月からは28年の竣工を目指して高さ約390mの「Torch Tower(トーチタワー)」が着工した。

 敷地面積は東京駅周辺で最大の約3.1ha。大手町連鎖型都市再生プロジェクトの第4次事業として、街区内の下水ポンプ所や変電所といった都心の重要インフラの機能を維持・更新しながら、10年以上をかけて4棟のビル開発を進めている。トーチタワーは地下4階地上62階建て延べ55万3000㎡。設計を三菱地所設計、施工を清水建設が担当している。

「TOKYO TORCH」開発ステップ図


 三菱地所設計が同事業に参画したのは07年にさかのぼる。当初は2次元で設計を進めてきたが、プラン検討が動き出した13年からはオートデスクのBIMソフト『Revit』を導入し、図面の作図だけでなく、3次元モデルによる可視化効果を生かしてプレゼンテーションにも活用し始めた。TOKYO TORCH設計室の永田大輔チーフアーキテクトは「設計に入ってからはBIMをフル活用し、複雑な構成の建物の検証を進めてきた」と振り返る。

 先行した常盤橋タワーは、敷地地下に首都高速道路と変電所の構造躯体があるため、不整形な地下平面に対して斜め柱のオーバーハング架構を採用するなど、地下インフラに寄り添う構造計画を立案した。トーチタワーでは外周にブレースを配置して建物全体を包み込む外郭ブレース制震構造を採用し、奥行き約20m、窓面基本スパン10.8m(最大21.6m)という開放的な空間を可能にした。同社は3次元シミュレーションを至る所で取り入れ、頻繁に発生する設計変更の面積管理にもRevitを活用している。

 永田氏が「従来の建築の在り方が用途や空間を明確に仕切る『実線』の建築であるとすれば、トーチタワーは用途や空間をゆるやかにつなぐ『点線』の建築」と説明するように、建物に集積する機能はオフィスやホテル、ホール、商業施設など多岐にわたり、しかも自然と建築と人々のアクティビティーが融合する空中散歩道や屋上庭園も配置する。

 高さ約300mの位置には周囲をガラス壁で囲まれつつも屋根がない屋外空間も計画しており、「オフィス排気の利活用によって居住域空調と植生環境を整え、エネルギーパフォーマンスを最大限に引き出した超自然空間を実現する」と付け加える。

 TOKYO TORCH設計室は全社としての導入に踏み切る前からRevitを設計ツールとして活用してきた。永田氏は「将来を見据え、デジタルデザインの流れが今後進展していくとの意識があり、チームとして先行して導入に踏み切った」と明かす。実施設計にもRevitを使い、現在は施工者と連携しながらBIMデータを軸に密な連携を進めている。「われわれは竣工後を見据えてRevitモデルの構築を進めており、設計から施工、さらには将来的に維持管理の段階まで一貫して活用していくことも視野に入れて進めていきたい」と強調する。

 トーチタワーの担当者が先行してRevitを導入してきたように、近年は建物特性を見極めながら設計者が自主的にRevitを使う流れが広がってきた。山田渉BIM推進室長は「現在は設計者の全員が無理なくRevitを使える環境を整えている。社内では設計者が主体的にチャレンジしながら、プロジェクト特性に合わせた最適なBIM活用事例が増えてきた」と手応えを口にする。

完成後のトーチタワー外観イメージ



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