【NSRIフォーラム】野老朝雄氏が「個と群と律」をテーマに講演 真理や美の再発見 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【NSRIフォーラム】野老朝雄氏が「個と群と律」をテーマに講演 真理や美の再発見

 日建設計は、東京都千代田区の経団連ホールで第51回NSRIフォーラムを開いた。美術、建築、デザインの境界を越えて活動しているアーティストの野老朝雄氏が「個と群と律」をテーマに講演。さらに同社職員との対談を通じてデザインのあり方を探った=写真。
 野老氏は2001年9月11日に米国で起きた同時多発テロ以降、「断絶した世界を和でつなげること」をテーマに、さまざまな紋様の制作を開始。自ら「千本ノック」と呼ぶスタディーを重ねる中で、単純な幾何学原理に基づいて定規やコンパスで再現可能な紋や紋様のピースとなる個を見いだした。これを複数組み合わせて群とする際に操作するルール=律を用いることで「世の中に存在していた真理や美を再発見することができた。出会わせていただいたという感覚だ」と語った。
 こうした紋や紋様は数億通りのパターンを生み出すため、一見すると数学的な発想に基づいていると思われるが「学生時代の成績はとても悪かった」と数学は苦手だったことを告白。自身の作品を巡ってソーシャルネットワークによって構造や数学的な議論がやり取りされた状況に対しては「会ったことがない誰かと価値を共有してつながるという部分を夢見ていた」とポジティブにとらえたという。
 学生時代に野老氏の作品に影響を受けた日建設計の角田大輔デジタル・デザイン・ラボ(DDL)室室長代理は「仕組みをつくりながらデザインをしているところに憧れた」とした上で、自らが取り組んでいる樹形図と類似度によって過去のデザインを継承していく仕組みづくりを紹介。「過去につくられた良いものを引用し、新しいものを生み出すデザインの律が自然に流れるようになればいい」として、コピーする側を罰するのではなく、コピーされる側を評価するという前向きな継承のあり方に言及した。
 大谷弘明設計部門副統括設計グループ代表は、「デザインを生み出す過程に深いストーリーがあるということを知っていただきたかった」とした上で、「神が与えたルールを見つけ出せるというのもすごいことだ」とたたえた。
 野老氏は「日本の技術力をアピールできる現場があれば一緒に取り組みたい。箱モノやインフラがネガティブな方向でとらえられるときに、みんなでつながることが大事だ」と協働を呼び掛けた。

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