【記念シリーズ・横浜市公共建築】根岸森林公園トイレコンペ/5者が公開ヒアリング | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

横浜市公共建築100年

【記念シリーズ・横浜市公共建築】根岸森林公園トイレコンペ/5者が公開ヒアリング

 横浜市は22日、同市の関内ホールで「横浜市公共建築100周年事業」の一環となる根岸森林公園新築トイレ設計コンペの公開ヒアリング審査を実施した。全267者から1次審査を通過した5者が2次審査に臨んだ。結果は9月1日に公表する。

コンペ参加者(前列)と審査委員

 中倉康介氏と増田伸也氏のグループは「大地とつながる木レンガの風突トイレ」をテーマに、蛇籠(じゃかご)の壁で構成した塔状の建築を提案した。塔の形でシンボル性を獲得する。風突の重力換気と蛇籠の壁で、トイレ特有の臭いの問題を解決する。
 小野寺匠吾氏は「木と土のパーゴラ」をテーマに、フジなどで緑化したパーゴラにより居場所としての日陰をつくり出す建築を提案した。トイレであると同時に、さまざまな人が憩える空間にする。土の柱を設けることで、自然とのつながりを意識できる。
 桐圭佑氏は「森林レストルーム」をテーマに、緩やかな弧を描いた山のような建築を提案した。地表から傾斜して伸びる高さ5m、幅19mの半月状の木製屋根が特長で、一つのオブジェのような形状をしている。屋根の下部はベンチとなっており、公園を眺めながら休憩できる。
 張昊氏と甘粕敦彦氏の「丘の小道」は、多彩な植栽で囲み、自然に調和させている。ランドスケープにこだわり、草花の季節の移ろいを感じられるようにした。扇状の木造屋根の建物は、周囲の環境になじむ落ち着いた印象を与える。トイレへの動線は全てスロープにした。
 山川尚哉氏は「樹々を包み込むトイレ」をテーマに、半屋外と屋外を組み合わせた開放的なトイレを提案した。トイレ内には樹木を植え、自然の中にいるような環境を提供する。ゆったりと利用できる広さを確保し、ベビーカーを持ち運べるほか、ペットとも利用できる。

 講評した審査委員の肥田雄三横浜市建築局公共建築部長は「今回残った5者は周辺環境にしっかりと向き合っていた。この後の選定では、プレゼンテーションで実現性に関する不安をどれだけ払拭(ふっしょく)できていたかどうかが議論されると思う」と話した。
 外部評価委員を代表して小泉アトリエ主宰の小泉雅生東京都立大教授は「各案はさまざまな新しい試みをしていて、コンペという機会をうまく使っていた。ぜひこの次の仕事につなげてほしい」と話した。市に対しては「(今回のコンペのような)若手を支援する取り組みを継続してもらいたい」と要望した。
 コンペはこれからの建築設計界をけん引する人材を発掘・育成するため、40歳以下の設計者・学生を対象とした。評価委員は小泉氏、神奈川大の曽我部昌史教授、中川エリカ建築設計事務所の中川エリカ代表らで構成する。建設地は日本初の洋式競馬が行われた中区根岸台にある根岸森林公園内。



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