鉄骨建設業協会(鉄建協)の新会長に川田忠裕氏(川田工業社長)が就任した。リーマン・ショック直後の2009年から8年間にわたって協会を率い、今回改めて、会長に推された。「仕事自体がなくなったわけではないが、間違いなくまた難しい時代に入ってきた」と指摘する川田会長に今後の具体的な施策や取り組みについて聞いた。【プライド持って活躍】
--就任の抱負は
「前回の在任期間と比べると、事業環境の見通しは改善している。年間の鉄骨総重量だけみれば減少しているものの、中長期的に見れば都心での超大型プロジェクトなどが見込める。人手不足や技能継承といった問題など決して楽な環境ではないが、協会としてDX(デジタルトランスフォーメーション)などを推進しながら、鉄骨建設の技術をリードしているという自負を持って取り組んでいきたい」
--注力する活動は
「顧客に対する要望活動を積極的に展開していく。過去の陳情といっていた時代には弱い立場にあったが、今はイコールパートナーとなっている。顧客から言われたことをやるだけではなく、一緒に安全で品質の高い建物を建てるために必要な要望を確実に伝えてきたい」
「現場では安全をはじめとするより良い労働環境の確立も進める。また、技能者の処遇改善に向けて建設キャリアアップシステムに基づく能力評価制度の導入も図っていきたい。全国鐵構工業協会(全構協)と一緒に同じ方向を向いて頑張っていきたい」
--カーボンニュートラルやデジタル化への対応は
「グリーン&デジタルは重要なキーワードとなる。太陽光発電の活用や水素ガスによる鉄骨切断など各社でできる取り組みに加え、ミルメーカーとも協力しながらグリーン鋼材の普及を図っていきたい。デジタル化ではBIMの活用による効率化やペーパーレス化を推進する。将来的にはロボットやAI(人工知能)の活用も視野に入れ、今はできることを地道に一歩ずつ進めていく」
--鉄建協の目指す姿は
「仕事が不足すると安値で受注してしまうということがこれまで起こってきたが、本当にそれで良いのかということを問題提起したい。安く受注すれば会社の利益は下がり、社員の給与も良くならない。ひいては品質や安全にも影響し、顧客にとってもデメリットになりかねない。イコールパートナーとして必要なことは伝えるとともに、全構協ともコミュニケーションを取りながら、持続可能な事業環境の確立につなげたい」
「昨年の能登半島地震など今後も大地震のリスクがある中で、われわれは頑丈な構造物を提供し、都市にいる人を守る最後のとりでであることは間違いない。協会、業界にいるメンバーがそのプライドを持って活躍してくれることを期待している」
* *
(かわだ・ただひろ)1989年12月米サン・ディエゴ州立大大学院航空宇宙工学専攻修了。85年川田工業入社、97年取締役航空事業部長、2002年取締役管理本部副本部長兼航空・機械事業部長、03年常務兼常務執行役員管理本部副本部長航空・機械事業部長を経て、05年6月から社長。川田テクノロジーズ、カワダロボティクスの社長も兼務する。業界活動では鉄建協のほか、日本橋梁建設協会の副会長を務める。
◆記者の目
前回の在任期間を終えた後は「正直ほっとした」と率直に話し、「改めての就任でまた身の引き締まる思いだ」と前を向く。事業量の確保や単価の維持など従来の課題に加え、担い手の確保といった新たな課題も現出しているが、これまで厳しい時代を乗り越えてきたからこその信念が言葉の端々に見える。目先の利益にとらわれない視線で業界を発展へと導く。
--就任の抱負は
「前回の在任期間と比べると、事業環境の見通しは改善している。年間の鉄骨総重量だけみれば減少しているものの、中長期的に見れば都心での超大型プロジェクトなどが見込める。人手不足や技能継承といった問題など決して楽な環境ではないが、協会としてDX(デジタルトランスフォーメーション)などを推進しながら、鉄骨建設の技術をリードしているという自負を持って取り組んでいきたい」
--注力する活動は
「顧客に対する要望活動を積極的に展開していく。過去の陳情といっていた時代には弱い立場にあったが、今はイコールパートナーとなっている。顧客から言われたことをやるだけではなく、一緒に安全で品質の高い建物を建てるために必要な要望を確実に伝えてきたい」
「現場では安全をはじめとするより良い労働環境の確立も進める。また、技能者の処遇改善に向けて建設キャリアアップシステムに基づく能力評価制度の導入も図っていきたい。全国鐵構工業協会(全構協)と一緒に同じ方向を向いて頑張っていきたい」
--カーボンニュートラルやデジタル化への対応は
「グリーン&デジタルは重要なキーワードとなる。太陽光発電の活用や水素ガスによる鉄骨切断など各社でできる取り組みに加え、ミルメーカーとも協力しながらグリーン鋼材の普及を図っていきたい。デジタル化ではBIMの活用による効率化やペーパーレス化を推進する。将来的にはロボットやAI(人工知能)の活用も視野に入れ、今はできることを地道に一歩ずつ進めていく」
--鉄建協の目指す姿は
「仕事が不足すると安値で受注してしまうということがこれまで起こってきたが、本当にそれで良いのかということを問題提起したい。安く受注すれば会社の利益は下がり、社員の給与も良くならない。ひいては品質や安全にも影響し、顧客にとってもデメリットになりかねない。イコールパートナーとして必要なことは伝えるとともに、全構協ともコミュニケーションを取りながら、持続可能な事業環境の確立につなげたい」
「昨年の能登半島地震など今後も大地震のリスクがある中で、われわれは頑丈な構造物を提供し、都市にいる人を守る最後のとりでであることは間違いない。協会、業界にいるメンバーがそのプライドを持って活躍してくれることを期待している」
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(かわだ・ただひろ)1989年12月米サン・ディエゴ州立大大学院航空宇宙工学専攻修了。85年川田工業入社、97年取締役航空事業部長、2002年取締役管理本部副本部長兼航空・機械事業部長、03年常務兼常務執行役員管理本部副本部長航空・機械事業部長を経て、05年6月から社長。川田テクノロジーズ、カワダロボティクスの社長も兼務する。業界活動では鉄建協のほか、日本橋梁建設協会の副会長を務める。
◆記者の目
前回の在任期間を終えた後は「正直ほっとした」と率直に話し、「改めての就任でまた身の引き締まる思いだ」と前を向く。事業量の確保や単価の維持など従来の課題に加え、担い手の確保といった新たな課題も現出しているが、これまで厳しい時代を乗り越えてきたからこその信念が言葉の端々に見える。目先の利益にとらわれない視線で業界を発展へと導く。