三機工業は、建築設備用3次元CAD『Rebro(レブロ)』を開発するNYKシステムズと連携し、設備設計図の自動作図機能を共同開発している。企画・設計から実施設計における作図の省力化と設計品質の安定化を目標に掲げ、初弾として「機械排煙設備」の自動作図機能を開発する。開発した機能は建築設備業全体で活用してもらうため、来春リリースする予定のRebro新バージョンへの搭載を目指す。
同社は、Rebroのフル3次元化とBIM対応ソフトとしての先進性に着目し、2016年から導入を開始した。その後もNYKシステムズと部品や部材に関する属性管理や設備機器データに関するモデル合成の合理化などを進め、BIMの機能向上に取り組んできた。
具体的には機器表などのExcelデータとRebroのデータ連携、BIMモデルの属性情報から系統図のモデル化や見える化を実現する系統管理機能、さらに設備機器周辺の配管やダクトをセットにしたモデル化など、業務効率化と作図精度向上に寄与する機能開発を共同で進めてきた。21年からは社内教育を開始し、Rebroを同社の標準ソフトに位置づけ、協力会社も含めて利用拡大と定着化を進めている。
こうした動きを発展し、24年12月からは両社で自動作図の共同開発を開始した。三機工業は、設計本部とBIM推進センターを中核に、3支社の設計部門、Rebroの作図を担っているグループ会社のキャド・ケンドロ社が参画し、月1回の定例会議を設置して全社的な推進体制を整えている。同社の豊富な実務経験とNYKシステムズの開発力を融合し、実践的な機能開発を進める方針だ。
社内のBIMの普及や定着を担うBIM推進センターは、自動作図したい内容を全社からヒアリングし、両社で優先度を決めた上で具体的な検討を進めている。三機工業建築設備事業本部技術管理本部BIM推進センターの石丸直BIM推進部長は「当社は設計手順や法規など実務面を熟知する一方、NYKシステムズは自動作図で設計を仕上げるためのルール化など別の視点のノウハウがある。当社の経験を提供し、有意義な開発を進めたい」と意気込む。
初弾として開発を進めているのが、設計プロセスが明確な排煙設備の自動作図機能で、6月から自動化プログラムの検証を本格化する方針だ。Rebroは冷媒配管や空調ドレン管の自動接続機能を備えるが、今回の開発では、「排煙口からファンまでのルートの自動作図に加え、建物の縦方向シャフトの位置を変更しても排煙ルートが自動で追随する」(石丸BIM推進部長)ようにして、さらなる設計効率化を目指す。
自動作図を設計に導入する意義について、開発をけん引する佐古俊晴執行役員建築設備事業本部設計本部長は「設計期間は限られるため、作図のスピード感が問われるフェーズだ。自動作図により時間が短縮されるメリットは大きい」と語る。
今回の取り組みは、24年10月から27年10月まで3年間の計画となる。有効性などを検証した上で、他の設備機器も含めた自動作図機能の開発を継続する方針だ。ゆくゆくは施工段階での自動作図の検討も開始する。将来的に維持管理を視野に入れたライフサイクルデータの活用と、AI(人工知能)技術の導入を検討していく。
佐古本部長は「今回の取り組みを単なる自動作図にとどめるのではなく、当社のR&DやDX部門とも連携し、BIMデータを共通基盤とした業務プロセスの改善を図りたい」と見据える。具体的には、設計データを起点とした施工シミュレーション、コスト最適化、環境負荷計算での活用を想定し、建設とITの融合による新たな価値創造のモデルケースになることを期待する。
設備設計図作成における業務プロセスの改善は、「当社だけではなく設備業全体の課題」(佐古本部長)だ。今回の成果は設備業界全体で活用してもらう方針で開発を進めており、「当社とNYKシステムズの取り組みに共感いただけるなら、ともに機能を発展していきたい」とし、他社とも連携してさらなる生産性向上を目指す。