【BIM2025⑱】PLUS.1×ダイスネクスト 環境整備の協創ネットワーク | 建設通信新聞Digital

7月11日 金曜日

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【BIM2025⑱】PLUS.1×ダイスネクスト 環境整備の協創ネットワーク

PLUS.1とダイスネクストが、BIMデータ基盤の環境整備に向けて「協創」の関係性を強めようとしている。中立性を重視したBIMコンサルティングを展開するPLUS.1の戦略立案力と、ファミリ制作で国際規格ISO19650を認証取得したダイスネクストの技術力をどう融合するか。PLUS.1の高木英一CEO、大島友延CCO、ダイスネクストの植草敏雄社長、石川達也デジタル1部長に聞いた。

左から大島氏、高木氏、植草氏、石川氏

目的達成に向けたファミリづくり

 ――両社の強みは

高木 PLUS.1の設立から1年が経過した。当社は第3者性にこだわり、中立的にBIM導入を支援する。BIMの課題は多岐にわたり、当社だけの力では限界がある。より専門的なパートナーと手を組むことで、より高度なコンサルティングが実現できる。それぞれの強みを一つにして日本のBIM普及を後押しする「協創」のネットワークを形成していく。同じ志をもつ企業はダイスネクストを始め5社ほどに達し、定期的な情報交換する企業も含めれば15社にも達する。

大島 PLUS.1の立ち位置は、全体の方向性を導き、そこで出てきた課題を整理し、最適な枠組みを形づくるための方向性を示すことだ。BIM導入ではファミリ整備などデータ基盤の構築から取りかかる。ダイスネクストは豊富なファミリ製作の実績に加え、製作フローの部分で国際規格ISO19650も認証取得した実績をもつ国内屈指の実力者であり、当社にとって強力なパートナーになる。

植草 BIMプラットフォーマーであるPLUS.1の協創の考え方には共感している。ダイスネクストは大和ハウスグループの一員として、グループ企業のファミリ製作や管理を担っている。それ以外に大手ゼネコン、住宅設備やエクステリア関連のメーカーなどともお取引があり、ファミリ提供数はグループを中心に年間で900-1000件程度行っている。企業のBIM導入が進展し、ファミリ整備の相談は着実に増えており、今後はグループ外にも力を入れたいと考えている。

石川 企業の多くが愛用するBIMソフト「Revit」は、プラモデルのように部品パーツ(ファミリ)を集積して建築モデルを作る。ファミリは属性情報を含んでおり、統一したルールに基づくことで、Revitをデータベースとして機能させることができる。いわばわれわれはデータ基盤構築の一歩目を担う重要な役割と考えている。

植草 1996年に建築設計事務所として設立した当社だが、CADデータ変換の業務にも取り組み、マンション販売時のイメージパースをCADデータに基づき作成する独自のスキームで成長してきた。10年ほど前に取引先のゼネコンがBIMの導入に踏み切る中で、その支援役として活動したのがBIMの出発点になる。

石川 私はその支援役として任命され、Revitを習得してきた。業務の1つとしてファミリ製作を担い、BIMのデータ基盤であるファミリの奥深さと重要性を認識し、のめり込んだ。現在は私が統括するデジタル1部がファミリ製作業務を一手に担っている。

 ――両社の関係性は

大島 ファミリ整備はBIM導入で最初に取り組む作業になる。PLUS.1は総合的な視点からBIMの導入コンサルティングをしている。当社のリソースも限られており、ファミリ整備の要求にはダイスネクストとの連携が最適と考えている。

高木 コンサルティングで重要視するのはBIMに取り組む中で何が機能しているか否か、課題を徹底的に整理し、その上で将来的に何を目指すか、その目的をきちんと取りまとめることだ。データ基盤となるモデルづくりではファミリの作り方や、そのデータを活用するプロセスについても企業側と最初に合意することが必要になる。当社が方向性を導き出し、ダイスネクストがファミリ整備を担う協創の関係性を強めていきたい。

石川 ファミリ整備で大切なのはどのような目的でBIMを運用するか、その方向性の部分であり、それが決まらないと、ファミリ製作の方針も定まらない。つまりBIMの「I(インフォメーション)」の部分がとても重要になる。PLUS.1が方針を整理する流れになれば、ファミリを活用したBIMの効果が最大限に発揮できる。

植草 当社では、同じ大和ハウスグループ傘下のフジタがISO19650を認証取得するタイミングに合わせ、23年10月に認証を取得した。審査機関によると、ファミリ製作での取得は世界初という。これによりファミリ製作の業務フローを明確化でき、質の高い成果を出す流れを構築できた。

石川 これまでのファミリ製作は企業側から頼まれたものを各自の経験から形にして提供していた。ISO19650の取得によって納品時のチェックやデータ管理が統一されたスキームとなり、品質維持の観点においては、依頼内容に対し要求通りの成果であるかチームで把握できる体制になった。

高木 目的をはっきり示せば、ルールも決めやすくなる。グレーの部分を極力なくすことがBIM導入に欠かせない視点だ。企業には課題をきちんと伝えるようにしている。ルールがあっても、それを周知しないといけない。現実と理想のギャップを埋めることを常に心がけている。

大島 コンサルティングではBIMのモデルを見るところから始めている。BIMは会社によってやり方も整え方も違う。ゼネコンでも設計と施工の部門で進め方に違いがあるように、BIMデータの作り方も人によって異なるケースが少なくない。

高木 BIMはデータ戦略である。モデル表現、図面ルールも統一して初めて、連携できるデータになる。ある程度、自由度が高くても問題ない部分と、きちんとルールを設けて取り組むべき部分をしっかりと区分けして環境を整えていくことが必要だ。

石川 まさにデータを集計し、最適解を導くことがBIMの本質であり、そのためにもデータ連携を前提にした構造化されたデータを蓄積することが重要になる。データの統一を進めなければ、生きたデータにはならない。ファミリも同様に、目的を達成するためのルールに基づいて製作することが求められる。

 ――両社の協創とは

植草 PLUS.1には当社の良さを最大限に引き出してもらいたい。当社はファミリ製作のほか、BIMの標準化に向けた環境整備や人財教育にも取り組んでいる。10年前はマンション図面集の支援が売り上げの8割ほどを占めていたが、18年から大和ハウスグループとなったことを機にBIMの業績が拡大しており、現在は売り上げの9割ぐらいまで占めている。BIM確認申請の動きもあり、当社自身も次のステージへと向かう。

高木 BIM加速化事業に加え、確認申請のBIM対応も動き出すことで、BIM普及の流れは間違いなく強まるが、進み方を間違えれば、勢いが失速してしまう。PLUS.1を設立したのも、皆が一緒に次のステージに踏み込めるような流れをつくりたいという思いが根底にある。

大島 BIM確認申請は普及のマイルストーンになることは間違いない。データの標準化は必要不可欠となり、そのためには統一したフォーマットの構築が求められる。ただ、現在はそれぞれの企業が独自で取り組んでいる。この状況を変えていきたいという思いを強く持っている。

石川 ファミリ製作でも考え方は同じだ。BIMはデータを引き継いでいくことから業界全体で同じフローやパラメーターで共通化されたファミリを使っていかないと、BIMの効果を発揮できない。

高木 ダイスネクストのファミリ製作におけるISO19650の認証取得は世界でも類をみない。当社がBIMコンサルティングする企業がISO取得を検討する場合、ダイスネクストと連携して対応したいと考えている。

植草 PLUS.1と連携してISOのコンサルティングを展開できれば、当社が進めているファミリ製作の業務フローも浸透させることができる。大和ハウスグループのBIMを一般化することが当社のミッションであるが、将来的にはグループ外の領域でも当社が蓄積してきた経験を生かして事業展開したい。

高木 協創の視点は、BIMが多様化する中で、それぞれの強みを持ち合い、ともにBIM普及を進めていこうというものである。現在、各団体や各分野で標準化の動きが進んでいる。その流れをトータルでサポートする協調領域の枠組みをきちんと実現するためのハブとして活動していきたい。



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