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6月25日 水曜日

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【軽量・高強度で職人の負担減】アルミ製仮設支柱『アルパ』/フォービル

施工例。大手ゼネコンの現場に使用されている


 軽くて強い、現場にやさしいアルミ製仮設支柱『アルパ』に注目が集まりそうだ。大阪市内で主に型枠工事を営むフォービルは、長年の研究成果を基に今春に同製品を発売した。開発者である森本隆之会長は「少しでも職人たちの負担軽減につながれば」と語る。一般的に流通する仮設支柱のパイプサポートは、鉄製の円筒型で重くて運搬しづらく「型枠大工が一番扱いに嫌がる」からだ。そんな職人泣かせのパイプサポートがアルパの登場で「現場への持ち運びや設置もスムーズにし、作業効率性が格段に高まる」資材へと変貌を遂げる。既に大手ゼネコンの現場でも採用されており、高齢化に直面する建設現場での普及が期待されている。

森本会長


 苦節15年。「こんなに時間と費用を投じるなら、やるんじゃなかった」と冗談まじりに森本会長は振り返る。開発当初は「硬いもの同士をくっつければ強度が出ると思っていた」というが、許容荷重試験所では「1tどころか500㎏でもぐにゃぐにゃに曲がる」ほどで開発までの道のりは険しいものだった。

 それでも、「やりかけたらやり切らなあかん」と幾度の失敗を糧に研究を重ね、支柱の座屈の起きやすさを左右する値となる「断面二次半径」を考慮した設計に行き着く。支柱の形状を断面二次半径が大きく取れる八角形にし、各角の外側にリブを付けて強度を飛躍的に高めた。製品名のアルパは「アル」がアルミ製を意味する一方、「パ」は中国語の「8」で、製品の強度を支える八角形に由来する。

 断面二次半径の課題をクリアした後も、内管と外管をつなぐ接続部の強度確保のため、試行錯誤の日々は続く。自社倉庫内に鉄骨フレームで組んだ架台を設け、圧力をかける試験台を作るなど理想の強度を追い求めた。

 強度と並んで訴求材料となる軽さはアルミを使用することで、鉄と比較して3分の1の重量という物質特性上の優位性を保ちつつ、高さ調節に使う支持ピンの形状や設置箇所などに工夫を凝らし、支柱の重さを極力抑えた。

軽くて強く、作業性にも優れる『アルパ』


 こうしたたゆまぬ努力の末に完成した2種類のアルパは、日本建築総合試験所での荷重試験でも所定の強度を実証したほか、高強度と軽量化につながる二つの特許技術も取得した。

日本建築総合試験所での荷重試験を経て、所定の強度を確保した


 「アルパ45」は、一般的なパイプサポート(70型)よりも1本当たり5㎏も軽い8.9㎞、強度は1.9t相当の19キロニュートン(kN)となる。主に床板などを構築する際に使用する型枠支保工用で提案する。同社独自の型枠解体工法「ピンポイント工法」でも使用できるように設計されており、代替需要も見据える。

 「アルパ75」は重さ11.1㎏、強度3.6tに匹敵する36kNを誇り、PC造など建造物の仮設支柱としての利用を想定する。

 45と75の2タイプ展開とはいえ、50型や60型、70型など支柱の長さは要望に沿って幅広く対応できる。ただ「最大に伸ばした時でも決して強度は落ちない」と高い耐久性と安全性にも自信を示す。差し込み管方式のため、自立使用できる作業性に加え、さびにくいというメリットも享受できる。

 今年2月には、大手ゼネコンが施工を担当する大阪市内のタワーマンションで、ハーフプレキャストを支える支柱用にアルパ75を数百本単位で納めるなど上々の滑り出しを見せる。5月には自社ホームページ内にアルパの専用サイトを設けるとともに、今後はSNS(交流サイト)を通じてアルパを紹介したショートムービーの配信も計画中で、多角的に訴求していく。

 森本会長も駆け出しの頃、現場で材料運びを経験しており、パイプサポート運びの苦労を知る一人。「鉄製のパイプサポートは重いし、差し込み管が滑って落下しないよう少し傾けながら運ぶ必要があって大変だった」と苦笑を浮かべる。それだけに「(アルパの利用で)現場の職人がちょっとでも楽できるなら」と建設業界での貢献も考える。

 近年は、異常気象による熱中症リスクなど職人たちの取り巻く環境は厳しさを増すばかりだ。「職人さんも好きで重たいものを持っている訳ではない」とし、「昔、型枠を補強するパイプは鉄製が主流だったが、鉄より軽いアルミ製のものが販売されてからは、急激に置き換わりが進んだ」と過去の事例を挙げながら、「アルパもそうなれば」と現場ニーズに沿った事業展開を見据える。

 

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