【BIM未来図】準大手ゼネコンのBIMデータ活用(上) | 建設通信新聞Digital

11月19日 水曜日

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【BIM未来図】準大手ゼネコンのBIMデータ活用(上)

戸田建設が目指すBIMデータの一貫活用


 オートデスクが今年6月に準大手ゼネコン9社を招いたBIMデータ活用に向けたラウンドテーブルは、BIMを軸に生産プロセスを変革しようとしている各社の“今”を如実に映し出した。参加したのは安藤ハザマ、奥村組、鴻池組、高松建設、鉄建建設、東洋建設、戸田建設、西松建設、三井住友建設のBIM推進担当総勢20人。BIMデータ活用に向けた重点施策も、日々悩んでいる課題も類似した意見交換となり、準大手ゼネコンが進むべき道筋が浮き彫りになった。 「現場が始まる前に対処しなければいけない」。そう強調したのは戸田建設の田伏雅樹建築工事統轄部建築生産企画部フロントローディング推進課課長だ。BIMデータ活用の先進事例をテーマにしたパネルディスカッションに登壇し、フロントローディング推進課が設備や鉄骨のモデルを統合し整合性などの課題を解決した上で、生産設計部門に設計BIMを引き継ぐ「BIMデータの中継ぎ役」として活動していることを説明した。

(左から)斉藤氏、田伏氏、濱岡氏


 戸田建設は、意匠と構造のモデルをBIMソフト『Revit』、設備モデルを別ソフトで作成しており、建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』上で統合モデル化している。実施設計の段階からフロントローディング推進課が参画することで、施工の知見を設計側にも共有する流れをつくっている。「整合性の取れたモデルを引き継ぐことが、施工段階での効果的なBIMデータ活用につながる」と語った。

 「当社が取り組もうとしている流れと一致している」。登壇した安藤ハザマの斉藤正和建築事業本部BIM推進部長も戸田建設の考え方にうなずく。その中で課題に感じている一つが「統合モデルの詳細度をどこまで突き詰めていくか」という点だ。例えば鉄骨ファブリケーターは自前の納まりを優先する場合があり、鉄骨モデルの通りに制作が進まないケースもある。「モデル精度レベルをあらかじめ決めなければ、時間も労力も無駄になってしまう」と続けた。

 安藤ハザマでは、設計モデルから図面を出力するモデル先行の流れを確立しようと取り組み始めている。意匠、構造、設備を同時並行で進めるアジャイル型のBIM設計に取り組み、それをACC上で共有している。「CDE(共通データ環境)を確立し、リアルタイムに情報を共有しながら、設計プロセスのコミュニケーション密度を高めることで、整合性の取れたモデルを施工に渡すことでき、それが生産性を向上させる基盤になる」と強調した。

 「整合性の取れた正しいデータをつくることが何よりも大切」と同調したのは、西松建設の濱岡正行建築事業本部デジタルコンストラクションセンター長だ。BIMを軸に提案型のフロントローディングに取り組む上で「より早い段階からモデルを確定していくことが重要になってくる」と付け加えた。「西松DXビジョン」ではスマート現場のロードマップを掲げており、その実現には「基盤となるBIMデータが必要不可欠」と訴えた。

 西松建設も、戸田建設や安藤ハザマと同様にACC上でデータの統合や共有を進めている。ゼネコンの強みである設計施工一括の生産プロセスにBIMを導入する際、準大手各社は設計から施工へのデータ連携を確立することを重点テーマの一つとして位置付けている。アプローチの仕方は企業ごと異なるものの、共通して取り組むのはCDE基盤を構築し、整合性の取れたモデルをきちんと引き継ぐことだ。設計から施工につなぐ流れを整えようと各社は一斉に動き出している。
 

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