準大手ゼネコン9社のBIM推進担当が勢ぞろいしたオートデスクのラウンドテーブルには、施工現場へのBIMデータ活用を促進しようと、まい進する準大手各社の前向きな姿が映し出された。スマート現場の実現に向けてロードマップを掲げる西松建設の取り組みは、オートデスクの建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』を基盤にBIMデータ活用を推し進める先行事例の一つだ。
2022年に策定した「西松DXビジョン」は現在バージョン2.2となり、デジタル技術の進歩と自社のデジタル活用フェーズの進捗(しんちょく)に合わせ、着実に進化させてきた。施工管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)では業務をデジタル化しながら作業の未来を予測するような施工管理の実現に向けて取り組み、施工段階では作業の遠隔化や自動化、鉄骨ファブリケーターとの生産連携も含め、より現場が効率化できるような流れにシフトしていく。
パネルディスカッションに登壇した西松建設の濱岡正行建築事業本部デジタルコンストラクションセンター長は「実は施工管理情報の一元化にもチャレンジしている」と明かした。興味深いのはACCの施工管理系ソフト『Build』を活用し、ベテラン技術者のノウハウを集め、若手に共有しようとしている点だ。現場所長や積算担当、計画担当などが図面などを見ながら、検討時期のタイミングや具体のアクションなど気が付いたことをメモとして共有する試みを進めている。「まだ1、2現場で取り組んでいる程度だが、将来的に多くのノウハウがACCの中に蓄積することができれば、AI(人工知能)との連携にも発展させていきたい」と先を見据えている。
濱岡氏と共にパネルディスカッションに登壇した安藤ハザマの斉藤正和建築事業本部BIM推進部長は「熟練所長の技術伝承はわれわれも重点テーマの一つに位置付けている」とした上で、「そのノウハウを構造化データとしてきちんと蓄積していくことが有効になってくる」と語った。戸田建設の田伏雅樹建築工事統轄部建築生産企画部フロントローディング推進課課長も「社として現場のノウハウをエクセルなどに蓄積しているが、構造化データとして残すことができれば、AIへの展開も可能になる」と続いた。
戸田建設では、三つのDXを掲げ、営業段階から設計、施工、維持管理に至るまで、一貫したBIMデータの活用に乗り出し、生産性の向上とデータドリブンの確立に結び付け、既存事業の変革に取り組んでいる。ラウンドテーブルに参加した建築DX推進室の鈴木隆史室長は「BIMに最適化された業務プロセスの確立が目的の一つになるが、その先にある付加価値の部分を見据えながら取り組むようにしている」と説明した。
設計と施工に一貫して取り組むことはゼネコンの強みだが、BIMデータを次工程にもつなぐ部分は各社とも苦戦を強いられているのが現状だ。設計から施工へのデータ連携が難しいのはデータ共有のシステム的な部分だけではない。「データを連携していく前に、人と組織をつないでいくことが近道になる」と続けた。
近年の準大手各社ではBIMデータ活用の進展を背景に、より円滑な社内連携ができるように組織の再構築が広がっている。これは、まさに円滑なBIMデータ連携が実現できる組織づくりを常に追求している動きに他ならない。
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