【BIM未来図】新菱冷熱工業④ 新本社は施工プロセス変革実証の場/バックオフィスにPMr2人 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【BIM未来図】新菱冷熱工業④ 新本社は施工プロセス変革実証の場/バックオフィスにPMr2人

 2023年11月に竣工した新菱冷熱工業のイノベーションハブ本館(茨城県つくば市)は、同社が施工プロセス変革の重点テーマとして取り組む施工現場とバックオフィスの連携を検証するトライアルプロジェクトでもあった。機械設備工事を担当した同社は代理人を含む現場担当として2人の女性技術者を配置した。

 施設はS一部RC造3階建て延べ4807㎡となり、通常であれば4、5人の現場担当を置く規模だが、あえて現場担当を2人に絞り、それをバックオフィスの約20人で後方支援した。若林達樹横浜支店技術二部長は「仕事の進め方を根本的に見直し、同時に現場の魅力づくりに向けて、女性目線の視点から現場運営のあり方も変えたいという狙いがあった」と説明する。

 最前線の現場担当とバックオフィスは、オートデスクの建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』で情報を共有してきた。課題として浮き彫りになったのは進捗(しんちょく)管理の部分だった。バックオフィスの人数を多くしたため、情報共有のタイミングが担当者ごとに異なってしまい、円滑なコミュニケーションが難しかった。「バックオフィスの適正な体制を検証する上で、大いに参考になった」と振り返る。

 その経験を生かして今年4月に着工した新本社ビル(東京都新宿区)では、バックオフィスの担当窓口を明確に位置付け、現場との情報共有が円滑にできるように枠組みを構築した。同社が担当する機械設備工事の現場代理人を務める前原恵二首都圏事業部技術一部技術三課主査は「PMr(プロジェクト・マネジャー)と副PMrの2人をバックオフィスの担当に置き、情報共有の流れを一本化する体制にした」と説明する。

今年4月に着工した新本社ビルの完成予想


 23年11月竣工のイノベーションハブ本館ではBIMソフト『Revit』を全面導入したが、新本社ではあえて別のソフトを使い、建築工事の施工者が提供するRevitデータと、中間ファイル形式のIFCデータを介してACC上で統合する。デジタル推進企画部BIM課の酒本晋太郎課長は「並行してRevitモデルを作成しながら比較検証も進めており、これによってRevitの優位性を実証していく」と考えている。

 S一部SRC・RC造地下2階地上13階塔屋1層延べ1万8090㎡の新本社は、自社開発のさまざまな脱炭素技術を導入する環境配慮型ビルとして計画している。現場では建築工事の杭打ちがスタートし、並行して総合図の作成も動き出しており、建築、機械設備、電気それぞれのBIMモデルを統合し、設備機器類の仕様決めも進行中。前原氏は「専門工事会社の立場だけでなく、施主の目線からもACC活用を検証できる機会になっている」と語る。

新本社の設備モデル


 20年3月竣工の新菱神城ビルを出発点に、23年11月竣工のイノベーションハブ本館、そして26年夏の竣工を目指す新本社ビルは「まさに施工プロセス変革に向けた実証の場」と、デジタル推進企画部の齋藤佳洋部長は位置付ける。特に新本社ビルはRevitとACCを活用した集大成のプロジェクトとなるだけに、酒本氏は「ここでの成果を社内に向けたRevit普及の起爆剤にしたい」と期待を寄せている。施工BIMツールに定めたRevitをいかに社内に浸透させるか。それは同社にとって施工プロセス変革を成功に導くための乗り越えるべき最重要課題でもある。



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