JR東日本建設工事部が提供する安全教育eラーニングコンテンツ「KeYing(キーイング)」が注目されている。専門性が高い鉄道工事の教材作成から受講者管理まで一括して対応し、10分程度にまとめたオリジナル動画で質の高い安全教育を実施する。教育の効率化と質向上を同時に実現できることから、全国の民間鉄道や第三セクター鉄道など鉄道事業者で導入が広がっている。最近では鉄道工事の教材作成だけでなく、事故防止教育やバス教育にも力を入れ、ゼネコン、バス事業者へと導入がさらに広がっている。
国土交通省「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」第10条に基づき、鉄道事業者は係員に安全確保に必要な知識・技能を習得する安全教育(省令10条教育)の実施が義務付けられており、係員は年一度、受講する必要がある。
同社は従来、省令10条教育を座学の集合研修で実施していたが、コロナ禍を契機に東京建設プロジェクトマネジメントオフィス(東京PMO)がプロシーズによる学習管理システム(LMS)を活用し、eラーニングによる教育プログラムをスタートした。同年度に約1200人が受講し、高い教育効果を得たことから東京PMO以外の他事務所に拡大。2024年度に「KeYing」として社外販売を開始した。
販売を開始した背景には、鉄道事業者がeラーニングの教育動画の制作を依頼すると、一般の動画制作会社には鉄道工事の専門用語が分からず、意図の伝達に手間と労力がかかることがある。またベテラン職員が安全教育の企画から講習運営まで1人で対応することが多く、負担が大きいのも課題となる。
同社は鉄道の安全ルールを熟知するほか教育動画の作成ノウハウもあり、社外の教育動画もスムーズに作成することが可能だ。研修の企画、教材作成、受講者の募集、登録、動画配信、受講データの管理まで一括して対応することで研修運営者の負担も大幅に軽減できる。
具体的には、従来の研修資料、規程や安全ルールなどの資料一式を提供してもらえば、企画、撮影、編集をワンストップで実施する。教材は、撮影映像による教材、イラストや図式を入れて詳細を学ぶ説明映像、VRや漫画映像などによる印象に残る表現も要望に応じて作成する。
一つの動画は最大10分程度とし、集中して視聴できる長さにまとめる。スキップや早送りで視聴できないが、都合に合わせて中断は可能だ。聴講が終了すると5分間の小テストを実施して理解度を確認し、知識の定着を図る。
ログインはIDとパスワード認証に加え、顔認証を追加でき、替え玉受講を防ぐ。受講中も定期的に顔認証し、本人でない場合や居眠り、不在を検知すると教材が自動的に一時停止する。テスト中も顔認証で不正を防止する。
データを使った受講結果の整理や受講者一人ひとりの理解度も確認。間違いの傾向などを分析し、組織の弱点を把握した上で翌年度の研修で手薄な部分を厚くするなど改善提案も行う。「KeYing」を推進する建設工事部基盤戦略ユニット(技術戦略・DX)の岡本健太郎マネージャーは「JR東日本の安全教育をそのまま提供するのでなく、各社のニーズに合わせたオリジナルの教材やテストを制作する」と特徴を説明する。
受講者はパソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットで好きな時間、場所で受講できるほか、研修会場に移動する手間もなくなる。受講者の80%が「簡単に操作できた」とし、90%が今後の受講形式で「eラーニングを希望」と回答している。
現在、IGRいわて銀河鉄道、東京メトロ、西武鉄道、青い森鉄道、JR四国、JR九州などの鉄道事業者、京王建設などゼネコンにも導入が進んでいる。バス会社も注目し、26年度からジェイアールバス東北も導入予定である。東京PMO企画戦略ユニット業務変革・新事業(PM/CM推進)の大橋由貴さんは「バス事業者から、バス運転者への教育は一度に大人数を集めることができず苦労していると聞いていた。何か力になれればと思い、バス会社に注目した」と説明する。各路線が運行する中で集合研修するのは難しく、個人単位で柔軟に研修できるeラーニングのメリットは大きい。「バス会社に積極的に展開していきたい」と力を込める。
日本の鉄道事業者はそれぞれ運用するルールや資格が異なるが「人手不足が進むため、安全教育の標準化が必要になる」と岡本マネージャーは展望する。大橋さんは「理解度が低い箇所をフィードバックして知識が定着しやすい教材づくりを目指している。覚えた知識を現場で生かせるようにしたい」と意気込む。
大阪市のインテックス大阪で5月20-22日に開催する産業DX総合展と、5月27-29日に開催する鉄道技術展・大阪に「KeYing」を出展する。サービスの問い合わせは、電子メール(key@jreast.co.jp)で受け付けている。



