人材の多様化見据え 成長促進に効果
ダイダンは、自社施設である八尾研修所(大阪府八尾市)の改修プロジェクトで、発注者かつ設備工事の施工者の立場から、他社の協力も得て、若手や女性を主体とする現場運営体制を構築した。事業規模のさらなる拡大を目指して性別や国籍を問わずに新卒者の採用数を増やす中、現場で働く人材の多様化が一層進む未来を見据えた同社初の試みだ。同社の新入社員は、全員が入社後すぐに八尾研修所で研修を受ける。新卒者数を近年増やしてきた影響で施設が手狭になったことに加え、築後約30年が経過して老朽化が進んでいるため、改修することにした。
設計と施工は、建築工事をNTTファシリティーズ、設備工事は直営で担い、2025年10月に着工した。施設を供用しながら施工を進めており、27年3月の竣工、4月の運用開始を予定する。
改修のコンセプトには、▽新たな知識の習得、初めてを体験できる場▽共用部の充実による施設の高効率運用、ウェルネス化▽ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)・DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組み、ストック改修のフラッグシップメント▽女性、若手活躍、海外からの人材登用--の4点を掲げる。 研修棟は、天井裏に見学歩廊を設けて設備の表と裏を学べるようにするほか、複数種類の設備を設置して建築、構造、設備の関係性を学習できる場にする。衛生器具配管のスケルトン化や縦配管の展示などを通して、実機に触れ、稼働設備を体験できる場も形成する。併せて、研修人数の増加に即した環境整備や、研修室の規模・環境・配置の適正化などを図る。
そして、このプロジェクトで最大の特徴は、若手・女性技術者が主体となって現場を運営している点にある。プロジェクトの立ち上げに当たり、入社1年目を含め、関西の拠点や名古屋支社から女性技術者を集めた。自社だけでなく、NTTファシリティーズと同社の協力会社である南部建設(大阪市)からも女性技術者に参画してもらった。こうした取り組みは業界内でも珍しい。 発注者の立場でプロジェクトを取りまとめる杉浦聡理事技術本部設計統括は、「近年、新入社員が増えているのと同時に、女性の比率が高まってきている」とし、女性が当たり前に現場で働く未来を見据えて「若手・女性主体で運営した場合、これまでの現場にない新たなアイデアが生まれるのではないかと考えた。自社施設の工事ということもあり、一度やってみようとなった」と経緯を説明する。
着工から約半年が経過した。この体制は、現時点で若手女性技術者の成長を促す効果があると受け止める。「若手の成長スピードが、男性所長の現場で働く女性社員より早いと感じている。女性が多く、コミュニケーションを取りやすいことが影響しているのではないか」と。
実際に女性メンバーからは、「女性同士だと話をしやすい」「会議の雰囲気が明るく、男性中心の現場とは意見の出方が違う」「自分以外は全員男性の現場しか経験してこなかったので、仲間意識を感じられる」「通常の現場にはほぼない女性用トイレが多数設置され、安心して働ける」など好意的な意見が多く聞かれた。「この現場が自分の中でスタンダードになってしまうと、次の現場にがっかりしてしまうかも」といった声も。 設備工事の現場代理人を務める河副知佳大阪本社技術第四部技術第三課課長代理は、「男性が多い職人を含め、誰もが働きやすい環境にすることを特に心掛けている」と話す。職人が利用する休憩所のいすをクッション性が高くて座り心地の良いものに変えたり、トイレの入り口前に目隠し用フェンスを設置するなどの工夫を講じた。また、快適な温度・湿度を年中維持できるようトイレにエアコンを設置したところ、特に職人から好評を博したという。
ダイダンは、この現場に限らず、多様な人材が働ける職場環境づくりを今後も進める方針だ。26年度の下期には、全国の支店に配属されている女性技術者をこの現場に集め、見学会と意見交換会の開催を予定している。





