のり面保護工を手掛ける三気建設(岐阜県大野町、杉山宏二代表取締役)は、2024年11月に現場の職人向け製品ブランド「主守手」(しゅしゅしゅ)を立ち上げた。第1弾の「ハンド&スキンクリーム」は6400本以上を販売。商品の企画・開発・ブランディングを担当する杉山阿有美氏は「当初は『そんなもの、職人は使わないよ』と言われたが、現在は若年層から中高年まで幅広い年代のユーザーを獲得している」と語る。
◇机に大量のクリーム
ブランド立ち上げのきっかけは、人事担当として採用活動に携わった経験だった。学校を訪問しても、教員や保護者から工事現場のハードな環境を理由に敬遠されがちで「現場がハードさを看過せず、それに見合ったケアをしている業界と見てもらう必要がある」と痛感した。
製品の着想も現場から得た。「肌の敏感さには個人差があるが、建設現場の職人には、手袋をしていても手がひどく荒れてしまい大量のクリームを使っている人がいる」。実際に父である杉山代表の机に何本ものハンドクリームが置かれていた。顔の肌についても「『日焼けが原因で、念願のヒゲ脱毛を断られた』『家に帰ると妻のパックを借りて必死にケアしている』などの悩みを聞いた」という。こうした職人の生の声と、杉山氏の化粧品メーカーでの勤務経験を生かし、企画・開発を1年未満という速さで終えてハンド&スキンクリームを発売した。
◇他業界の現場でも支持
発売後は建設業界の職人のほか、自動車解体工、看護師、介護士、農家など他業界の現場や、乳幼児を育てる保護者などBtoCにもユーザー層が広がった。「クリームを塗り直すチャンスが少ないので、一度塗ったら保湿効果が長持ちしてほしいが、べたつきも少ない方が良い。一般的なクリームではトレードオフとなるが、何とか両立した」という建設現場向け仕様が、業界を超えた支持につながった。
販路は自社オンラインショップや建材店、岐阜県のアンテナショップなど。「スキンケアが身だしなみとして性別を問わず当然視する若年層は、当初からユーザーとして見込んでいた。一方、中高年層のニーズも営業や調査で浮かび上がってきた」と市場分析する。
◇現場ケアから人材定着へ
ことし4月8日にはブランド第2弾の「フェイスシート」を発売。汗のべたつきを拭き取りつつ、日焼けや乾燥を対策する成分を肌に残す。スキンケア機能に加え「現場の仲間に『使ってみませんか』と1枚分けて、すぐ使える」という、現場でのコミュニケーションツールとしての効果も意識して開発した。
現在は職人がセルフケア用に購入することが多いが、会社による福利厚生用品としての定着も目指す。ポイントとみる中高年層について「年齢を重ねるほど肌は傷みやすくなり、現場で負う肌のダメージも重くなる傾向がある。長年現場で働いていて『職人の肌が荒れるのはしょうがない』という意識があっても、辛さを感じていて『現場向けのスキンケア製品があれば使いたい』と思う人が少なくない」と読み込む。
さらに「主守手をきっかけに当社に入社した職人もいる。現場の辛さをケアする製品の定着により、職人を大事にする企業・業界であると業界の内外に認識してもらい、人材採用・定着の促進につなげたい」と担い手確保も見据える。




