【高熱隧道】今だから話せるクロサン現場! 当時の施工担当者が難工事に挑んだ誇り語る | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【高熱隧道】今だから話せるクロサン現場! 当時の施工担当者が難工事に挑んだ誇り語る

 関西電力が1963年に富山県の黒部峡谷に建設した新黒部川第3発電所の導水路工事を記録した映画の上映会とトークセッションが5日、黒部市の宇奈月温泉で開かれた。温度百数十度の岩盤掘削に挑んだ当時の施工担当者が壮絶な作業状況を赤裸々に語った。
 仙人谷ダムから取水する新黒部川第3発電所の導水路の建設工事は高熱地帯を通ることから「高熱隧道工事」といわれ、岩盤からの滴で火傷してしまうほどの過酷な環境下で掘削が行われた。
 上映会では最初に、施工を担当した大成建設が制作した記録映画「地熱に挑む」が上映されたあと、新入社員として現場に入った同社の太田資倫氏と、専門工事業として施工に従事した寿建設の元社長、森崎俊紘氏がそれぞれの立場で当時を振り返った。
 放水しながらの坑内作業や高熱によるダイナマイトの自然爆発など、常に死と隣り合わせの作業環境だったことがリアルに説明され、宿舎では冬場に爆風を伴う大雪崩の危険にもさらされていたことが紹介された。
 森崎氏は当時の安全管理の水準を指摘するとともに、職人自身が高額報酬を求めて危険作業に挑んでいたことも明かした。

トークセッションする太田氏(右)と森崎氏

 両氏とも同工事が「日本で一番難しく、世界初の仕事だったことに誇りを持っている」と口をそろえた上で、太田氏は「これだけは人に負けないという専門を見つけ、エキスパートになってほしい」と若い土木技術者にエールを送った。
 森崎氏は「最近の元請け、役所の人たちは現場に来ることが減った。建設業は現場第一主義に戻らなければならない。わたしは現場が大好きだ」と力を込めて語った。
 会場の宇奈月国際会館の大ホールには地域住民や建設会社の関係者など約400人が詰めかけ、“今だから話せる”逸話や苦労話に聞き入っていた。主催した富山県入善建設業協会の大橋聡司会長は「今の豊かな暮らしは先人からの贈り物であることを見つめ直したい」と語った。

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