【記者座談会】熊本地震から2年 復旧はここからが本番/確認申請にBIM活用 クラウドの情報共有力に期待 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【記者座談会】熊本地震から2年 復旧はここからが本番/確認申請にBIM活用 クラウドの情報共有力に期待

復興が進む熊本城。市内工事は最盛期を迎え、人手不足が懸念される


A 2016年熊本地震から2年がたった。創造的復興に向けて取り組む被災地の状況はどうだろう。
B 阿蘇地域のインフラ復旧を担う国土交通省は、「ここからが本番だ」と気を引き締めている。熊本県は、現地事務所を設置し県道熊本高森線4車線化と復興土地区画整理の事業体制を整備した。公費解体や災害廃棄物の処理はおおむね完了して、これから災害公営住宅の整備など被災者の生活再建が本格化するよ。
C 熊本市は熊本城を始め、熊本市民病院の移転建て替えに着手し、被災庁舎を抱える自治体も建て替えに向けた建設計画を具体化させている。
A 復旧・復興工事の最盛期を迎えているところだね。ところで応急復旧から一貫して「オール熊本」を掲げ、県内建設企業が中心となって復興を進めているが、人手は足りているのだろうか。
B 県の入札不調・不落札の発生状況は震災前年度の1.7%に対し、16年度は13.9%、17年度が18.7%と急増している。直近となることし3月単月では7.4%と減少しているが、状況は依然として厳しいとみるべきだろう。
C 発注標準の見直し、復興係数・復興歩掛かりの導入など矢継ぎ早の対策は評価できる。しかし、ある町はまとめて100件近くの工事を発注するといったこともあったようで、発注者間の連携がうまく機能しているかは疑問だ。
B これからは災害公営住宅の建設も本格化する。民間工事も含め、いままで以上の情報共有が必要になることは間違いない。
A 建設業が理由で復興が遅れているとは思われたくない。まさに「ここからが本番だ」という気持ちで腹をくくり、この難局を乗り越えてほしい。

3次元モデルの可視化で審査時間短縮、審査密度も向上

A 話は変わるけど、日本建築センターが建築確認業務の事前審査にBIMを活用した試みはインパクトが大きかったね。図面を一つひとつチェックして行われる事前審査は手戻りが多く、申請者も時間をとられて大変だったが、これをクラウドを使って指摘事項などの確認も行ったというから、大幅な業務効率の向上につながったのではないかと感じた。
B 申請者の竹中工務店も含めて取材をさせてもらったけど、クラウドを介してリアルタイムに情報を共有できることで、建築確認業務自体のフロントローディングが実現したようだ。比較対象がないので数値的な効果までは導いていないが、同時並行で進む審査の流れを実現したことが何より大きい気がした。
C 事前審査は、建築確認をスムーズに進めるために念入りに行われている。複雑な建築物は、2次元図面を見ても空間構成などを理解しにくいケースが多々あるだけに、3次元モデルとして可視化できれば審査する側の理解度も上がり、審査時間の短縮や審査密度も向上する。
A そもそもこのトライアルが実現した背景には、申請者の竹中工務店側がBIMで緻密なモデルを作り込んでいたことが推進力になった。結局、申請する側のBIMがしっかりと整っていなければ、審査自体ができないからだ。さらに言えば、BIMモデルを関係者間で共有できたクラウド環境の存在も大きいようだね。
B 建設産業界が業界を挙げて生産性向上に取り組んでいる。クラウドのもつ情報共有の力は建築確認に限らず、建設生産プロセスの中でプロジェクト関係者がリアルタイムに情報を共有できる有効なツールになることは間違いない。一品生産だからこそ、より緻密な情報共有が求められる。建設業とクラウドはとても相性が良いと思うのは私だけではないはずだ。

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