寿建設(福島市、森崎英五朗社長)が、7月26日から31日まで福島市内のふくしんギャラリーで行った「インフラメンテナンス写真展」は、写真家・山崎エリナ氏が撮影した現場写真が評判を呼び、連日、多くの関係者や市民らでにぎわった。一般社会への発信力不足が指摘される建設産業界だが、アプローチによっては訴求力を発揮できることを裏付けた。
プロによる現場写真の撮影は、インフラメンテナンスの重要性を広く一般にアピールするとともに、今後の人材確保につなげようと、森崎社長が発案。昨年、知人に紹介されたのが、国内外の第一線で活躍している山崎氏だった。
もともと「相当すごいカメラマン」だと認識していた森崎社長だったが、除草現場の写真を目の当たりにし「信念を持って働いている人間を表現してくれている。草刈り(という地味な現場)ですら非常に良かった」と、改めてその感性と技量の高さを実感。社員の評判もすこぶる良かったことから現場撮影を続けることにした。
その後、道路、水路トンネル、橋梁などの補修や除雪の現場などの現場を撮影し、撮りためた写真の枚数は優に2000枚を超える。当初、維持・補修事業にうとかった山崎氏だが、撮影を重ねる中で「1つひとつ欠かせない仕事に、全員が怠ることなく向き合っている。体力・精神力、頭脳のすべてが必要な仕事」と理解を深め、いまや「コミュニケーションを交わす瞬間に垣間見せる笑顔、人と人の信頼関係とそこから生まれる作業の連携が素晴らしい」と“現場人”にほれ込んでいる。
こうした取り組みを紹介しようと森崎社長が作成した写真冊子は、配布早々に底を尽く人気ぶりで、山崎氏には冊子を見た建設業関係者から複数の撮影オファーが寄せられているという。
33点のパネルと、約100点の写真をスライド式に映し出すPCモニターが展示された今回の写真展でも、来場者からは「芸術だ」「素晴らしい」など、展示作品を称賛する声が相次ぎ、中には感動のあまり涙を流す来場者も見受けられた。会期中の入場者は延べ約400人に及んだ。
発注者からも写真の使用要請が寄せられる中、森崎社長は「(撮りためた写真を)倉庫に眠らせておくのはもったいない。機会があれば活用したい」と今後の使い道に思案を巡らす。
見る者に感動を与えるプロの写真が、インフラメンテナンスのアピールに大きく寄与した今回のケースは、今後の情報発信のあり方の1つのヒントとなりそうだ。