【室内照明で発電できる太陽電池】電池交換や充電が不要に 循環型エネルギーの実現に期待 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【室内照明で発電できる太陽電池】電池交換や充電が不要に 循環型エネルギーの実現に期待

 次世代エネルギーとして、室内の照明で発電できる太陽光電池に対する関心が高まり始めている。シャープや東洋紡が、新製品の開発について発表したほか、化学品事業を手掛けるカーリットホールディングスも素材開発に成功して国内メーカーと製品化の準備を進めている。国内における太陽光発電事業の頭打ちと、低電力でも多数の電源を必要とするIoT(モノのインターネット)の広がりが背景となっている。

シャープが開発したバッテリー交換不要のビーコン

東洋紡が開発するフィルム状OPV

 カーリットホールディングスが開発したのは、「色素増感太陽光電池用電解液」で、電解液を透明導電ガラスに塗り、電極で挟み込めば、室内程度の照度で発電できる。シャープも、色素増感太陽電池を電源として電池交換が不要なビーコンを開発し、清水建設の現場に納入した。東洋紡も、室内用光源でも高い出力を得られる有機薄膜太陽電池(OPV)用発電材料の開発を加速するため、フランスの政府機関との共同開発を開始した。

カーリットHDが開発した色素増感型太陽電池向け電解液

 再生可能エネルギーの拡大政策で、大規模太陽光発電設備が国内で一気に拡大したものの、地域によっては余剰感が出始め、FIT(固定価格買取制度)の価格見直しで事業の“うまみ”が下がり、国内の太陽光発電事業が頭打ち感をみせている。これによって国内メーカーの関心が、屋外大規模太陽光発電から、IoT時代に対応可能な室内照明でも発電できる太陽電池へと移ってきた格好だ。
 色素増感太陽光電池の最大の特長は、波長の長い可視光の吸収効率が高く、室内照明で高い発電効率を発揮する点で、太陽光下ではむしろ発電効率が落ちる。IoTを実現するためには、あらゆるモノにセンサーや通信機器を設置する必要があるものの、機器の電源を交換が必要な電池に頼ると、無数に設置された機器すべての電池交換というメンテナンス負担が大きくなる。室内照明で発電できる太陽電池があれば、電池がなくても機器を稼働させ続けられ、機器設置に対するハードルが下がる。発電した電気を充電できる充電池とセットにすれば、より高い出力が必要な製品でも稼働させられる。このため充電池の小型化が実現できれば、スマートフォンなど携帯端末も固定電源への接続による充電が不要になるという未来も開ける。
 室内照明で発電できる電池のもう1つの大きな可能性は、循環型エネルギーを実現できるという点だ。自ら発電した電気で照明を点灯し、その照明で再び発電できるため、災害時や電源確保が難しい地域、場所でも電気の確保が可能になり、“持続可能性”という観点でも大きな役割を果たす。今後、室内照明で発電可能な太陽電池を活用した新しいアイデアによる製品・サービスの開発がどこまで広がりを見せるのか、注目される。

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