【記者座談会】再生可能エネルギー政策 | 建設通信新聞Digital

4月16日 火曜日

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【記者座談会】再生可能エネルギー政策

A 再生可能エネルギーの政策が再構築されるが具体的には。
B 事の発端は、太陽光発電を筆頭にした再エネの大量導入時代に突入したことによる課題と、安定的発電ができない太陽光発電を受け入れるためのネットワークのあり方や、FIT(固定価格買取制度)の買い取り期間終了を見据えた対応だ。経済産業省は小委員会を設置し、2017年12月から議論を進めてきた。
C その結果が5日の中間整理(第三次)というわけだ。大きな柱は、太陽光発電でも大規模事業用と住宅用、洋上・陸上風力発電とバイオマスや小水力発電とに分けて政策判断していくことを打ち出している。
D 要は、大規模太陽光や風力は入札、地域電源と位置付けられた方は、再エネ電源としての評価だけでなく農業、林業含めた地元産業と地域活性化につながるかどうかも政策判断としたわけだ。
A 再エネの中でも洋上風力発電が話題に上っている。
E 清水建設が自航式SEP船(自己昇降式作業船)の建造を7月末に発表した。完成は22年10月の予定だという。陸上で建築を売り上げの大きな柱にしてきた大手ゼネコンが、なぜ畑違いの海洋分野で巨額の設備投資をするのかという声もあるが。
B 一部アナリストからも、約500億円という投資額に対し、投資に見合う市場がるのか、回収は可能なのかという声があったのは事実だ。

五洋建設が2月にお披露目式を開いたSEP型多目的起重機船(上)、清水建設が建造する世界最大級の搭載能力とクレーン能力を備えた高効率自航式SEP船完成イメージ(下)

◆法改正と新法が事業化意欲を後押し

E 確かに陸上(おか)の企業が海(マリン)工事に最新鋭の作業船を建造して参入することには驚いた。ただ考えると、これまでもメタンハイドレードなど海洋資源開発にはマリコンだけでなくゼネコンも参画している。また清水建設は、23年度までの5年間の中計で計7500億円に上る投資計画を打ち出している。SEP船建造もこの一環だ。
C そもそも船の保有は不動産投資・保有と同じアセットビジネスという見方もできる。海外への貸し出しだってビジネスになる。
F 洋上風力を見据えたSEP船と言えば、五洋建設が2月、SEP型多目的起重機船のお披露目をしている。同社は既に洋上風力発電市場拡大を視野に将来的には2船体制にも言及している。
E さらに東亜建設工業も大林組とSEP船建造を進めている。
A そもそも、なぜ再エネのうち洋上風力発電に企業の関心が向いているんだろう。
C 1つは再生可能エネが日本のエネルギー計画の中で主力電源化に据えられたからだ。再エネ拡大は国策。しかも大規模で継続・安定的発電が見込める再エネの選択肢は限られている。
B 経済成長と産業育成の視点でも、風力発電は期待のエースだ。部品点数は1万点以上で、産業の裾野が広い。しかも風力発電の主力電源化は、環境問題への取り組みを受け世界の潮流であり市場拡大は確実と言われる。だから日本は、国土交通省と経産省が連携して、港湾法改正に次いで一般海域でも長期占有の統一ルールと海域利用者との調整枠組みを盛り込んだ再エネ海域利用法の制定に踏み込んだ。
D 洋上風力発電への高い関心を聞いていて、3年前に国交省と経産省が連携して立ち上げた港湾内の洋上風力発電検討委員会初会合時の委員長発言を思い出した。委員長は、ユーラシア大陸最西端として知られるポルトガルのリスボン近郊「ロカ岬」に立つルイス・デ・カモンイスの叙事詩の石碑を引き合いに、「風力発電も陸が終わって、これから海だ。大航海時代が始まる」と言い切った。まさに新市場の獲得へ一斉に船出を開始したと言える。

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