【藤森照信×磯崎新】白熱の対談! 藤森建築は"見たことがないのに、なぜか懐かしい"『つくりもの』 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【藤森照信×磯崎新】白熱の対談! 藤森建築は“見たことがないのに、なぜか懐かしい”『つくりもの』

「素材見本」では藤森建築で使われた 素材と技法が展示された

 水戸市の水戸芸術館現代美術ギャラリーで3月11日から5月14日にかけて開催された「藤森照信展-自然を生かした建築と路上観察」。『神長官守矢史料館』を始めとする作品の資料や『草屋根』『銅屋根』(滋賀県近江八幡市、たねや総合販売場・本社屋)を模した展示品のほか、路上観察学会にまつわるパネル展示など、藤森氏の建築家としての足跡を示す、この企画展では、藤森氏と水戸芸術館を設計した磯崎新氏による対談も開催された。「藤森建築」の分析からメタボリズム批評まで、知己の間柄だからこその多岐にわたる濃密な応酬が繰り広げられた。
 藤森氏は、処女作である神長官守矢史料館の設計を依頼された経緯を「本来であれば、地元出身者である伊東豊雄さんがやるべきだったが、諏訪大社の歴史を踏まえたデザインが求められると思い、引き受けた」と振り返りながら、設計を手掛ける上で心掛けていることとして「現代建築の影響を感じられるものをつくらない」「歴史的な引用を使わない」という2点を挙げた。

壁一面に張り出された手描きのスケッチ

 「なぜ、あなたはああいうモノをつくるのかとよく聞かれるが、自分でも分からない。ただ、建築史家として他人の建築を批評してきた以上、同世代の建築家と同じことはできないと考えた。その上で、建築史家だから歴史的なアプローチで設計したと思われることも嫌だった」という。その結果として生まれたのが、“見たことがないのに、なぜか懐かしい”「藤森建築」というわけだ。
 他人の建築物は批評するが、自身の設計過程では決して言語化しないとも述べる。「検討過程は発酵のようなもので、自分の中にとどめておく必要がある。言語化は光を当てると言い換えることができ、発酵の敵だから自分のことは考えないようにしている」

展示室には「苔山」のオブジェも

 こうした藤森氏の生みだす建築に対し、磯崎氏は、能の事例を挙げて分析。「能は舞台装置が一切ないが、唯一の例外として、住居や土蜘蛛(くも)の巣などをシンボル的に表現する『つくりもの』というものがある。実物を模した『つくりもの』を能では非常に大切にする」と説明した。
 「藤森さんは意図的ではないにせよ、自然物を使ってナチュラルではないモノを組み立てる。つまりそれは、人工物であり、 『つくりもの』に通ずる部分だ」と続け、「路上観察の過程で引き出してきた美意識が影響しているのでは」と指摘した。
 対談は100分近くに及び、ユーモアを交えた掛け合いに、会場からはたびたび笑い声が起こっていた。

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