【ロゼッタ】多機能ハンズフリーシステム開発中 業界に特化した通訳や情報集積での活躍期待 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【ロゼッタ】多機能ハンズフリーシステム開発中 業界に特化した通訳や情報集積での活躍期待

 AI(人工知能)を使った自動翻訳システムを開発・運営するロゼッタは、飛島建設と共同で建設業向け多機能ハンズフリーシステム「T-4PO Construction(仮)」を開発している。同時自動通訳機能に加えて遠隔地からも情報共有を可能とするハンズフリーアプリケーションや現場でのデータ取得アプリケーションを実装する予定で、開発を担当する中村俊介戦略企画室マネージャーは「通訳機能にとらわれず、建設現場で広く活躍できる製品にしたい」と目標を語る。

T-4PO Construction(仮)使用イメージ

 同システムは、日本システムウエアが販売する産業用スマートグラス「HMT-1」を活用し、建設業の専門用語にも対応した同時自動通訳や画像共有、データの保存などを主な機能としている。HMT-1は音声認識によるハンズフリー操作を実現しており、防塵・防水性能に優れ衝撃にも強く、建設工事現場での使用に適している。
 ロゼッタは、2000の専門分野ごとにAIで機械翻訳エンジンを学習させることで、プロ翻訳者レベルの正確さを実現した自動翻訳ツール「T-4OO」を開発・提供している。
 開発中のT-4POでは、こうしたAI翻訳技術を音声認識・合成技術と組み合わせてリアルタイムでSpeech to text(音声認識)通訳を実施。結果を画面上に表示することで異なる言語の技術者同士でも円滑にコミュニケーションすることを可能とする。今回、建設業をターゲットとした製品開発に取り組む狙いを、中村氏は「国内建設業者の海外事業の増加や国内の建設現場で活躍する外国人材の増加を踏まえてのもの」と説明する。
 他社製品とは、業界別の翻訳エンジンを開発し、独特の言い回しや専門用語を網羅することで差別化していくとしている。すでに展開している文書ベースの翻訳サービスでは建設業界もカバーしており、これを会話ベースで高い精度を実現することが課題となっている。当面の対象言語は日本語と英語だが、中国語やベトナム語など、ニーズに合わせて対応言語を順次拡大していく予定だ。
 画像共有機能では、遠隔地の現場事務所、監理者、事業者会社とも音声・画像・図面・動画を共有できるようになるため、従来のWEBカメラによる定点観測では確認が困難であった場所の状況把握が容易になるとともに、計画と実行段階で生じた齟齬(そご)をすりあわせる際に、視覚的な情報を提供できるようになり、スピーディーで正確な問題解決につなげることができる。また、BIMやCIMとの連携で3D情報を共有することで、生産性の向上も見込める。
 HMT-1で取得した音声や画像情報はサーバー上に保存される。書類整理・作成の簡素化につながるほか、装着者視点での映像データを取得することができるため、工事の施工記録を残すことやヒヤリハットやトラブル発生時のデータも容易に収集できる。取得した情報は、動画で3日から1週間分程度保存可能となっており、事故やトラブルの原因究明などへの貢献が期待できる。さらには、集積したデータをもとに、危険な状態にある個所や危険な行動をしている作業者をAIが画像認識で判断し、装着者に警告を出す機能も計画している。
 同社の開発チームの中には、かつて建設業に従事し現場監督なども務めたことがあるスタッフも所属しており、外部からでは見えにくい現場の実体験に基づいた意見が開発に反映されている。
 今後、システム開発を進めて11月には実証実験を実施し、その結果を踏まえた商品化開発を経て2020年5月の販売開始を目標としている。製品の完成度を高めるためにはデータの蓄積が重要となるため、ロゼッタと飛島建設の両社はさらに多くの企業が開発に加わることを希望しており、「ゼネコンだけでなくハウスメーカーや電気工事会社などとも協業の可能性がある」と中村氏は展望を示した。

中村マネージャー

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