小柳建設のホロストラクション/ホログラフィックで現場可視化/施工課題を事前に洗い出し | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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小柳建設のホロストラクション/ホログラフィックで現場可視化/施工課題を事前に洗い出し

 小柳建設(新潟県三条市、小柳卓蔵社長)が開発したMR(複合現実)技術を活用したソリューション「Holostruction(ホロストラクション)」が、生産性の向上に大きな効果を発揮している。国土交通省が内閣府の「官民研究開発投資拡大プログラム」(PRISM)を活用して募集した革新的技術導入活用プロジェクトに同社とコマツのコンソーシアムで応募・採択され、国交省北陸地方整備局発注の「大河津分水路山地部掘削その6工事」で試行を進めている。ホログラフィックで現場を可視化し、着工前に施工時の課題を洗い出すことで、品質の向上と効率化につなげている。

複数人で視界や音声を共有して協議することができる

 ホロストラクションは、マイクロソフトのヘッドマウントディスプレー「HoloLens(ホロレンズ)」を活用し、構造物の立体的なホログラフィックを現実空間に投影する。調査・測量から設計、施工、検査、維持管理までのデータを一元的に管理し、時間軸に沿って工事の各段階がビジュアルで可視化できるため、工事計画の理解度の向上が図れる。
 投影するホログラフィックの大きさは自在に変更可能で、工事に関連する写真や書類などのデータも即時にクラウドから表示して確認できる。また、遠隔地の人とも視界や音声を共有して協議でき、移動時間を大幅に削減する。

画像や資料も同時に表示てきる

 同現場はCIM活用試行工事だったため、同社はホロストラクションの活用を提案。CIMデータから山地の掘削面をホログラフィック化し、発注者と協議することで、施工時に発生する課題を事前に洗い出した。
 その結果、平面の設計図面では確認が難しかった施工困難なオーバーハングや、傾斜が急な個所の発見につながった。中靜真吾専務取締役は「イメージをより直感的に共有でき、理解の度合いも明確になった」と成果を語る。
 協議には同社の若手技術者も同席。ホログラフィックによる現場の可視化は、実務経験の年数によらず施工計画の直感的な理解に貢献し、教育ツールとしても効果を発揮した。その効果は発注者にとっても同様で、「若手技術者の理解度向上に加え、受発注者間の協議におけるワンデーレスポンスがさらに推進されると感じている」と発注者より感想をいただいているとのことだ。
 また、ホログラフィックに実物大のダンプトラックを配置し、動線やすれちがいなどのシミュレーションも実施。安全面に関しても中靜専務取締役は「現場への認識の度合いが高まることで、危険予知の品質が向上する」と強調する。
 施工段階ではホロストラクションをICT建機のデータや現場のスキャンデータなどと連携させることで、より緻密でリアルタイムの進捗管理につなげ、さらなる生産性、品質の向上を目指す。情報伝達の速度が高まることから、和田博司innovation推進部長は「全体で3-5割の効率化が図れるのではないか」と見込んでいる。中靜専務取締役は「ホロストラクションを広く活用し、建設業を魅力ある産業にしていきたい」と展望する。
 

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