ベトナムにおける鋼構造技術者の育成と現地の社会インフラの発展を目的に、JFEスチールが2016年度から実施してきたハノイ国家土木大学とホーチミン工科大学での鋼構造に関する寄付講座が閉講した。20年度からこの講座によって育成された若手の大学講師が主体となって、各大学の正規の授業として再スタートを切るという。
各大学で毎年約30人の学生や若手講師らを対象に、日本がベトナムで行っているODA(政府開発援助)プロジェクトの紹介や鋼構造建築物、鋼製橋梁の設計技術や要素技術の演習などを展開。終了後に同社スチール研究所でのインターンシップを行うなど、精力的な取り組みを進めてきた結果、JFEグループでの採用にもつながったという。
経済成長を背景にインフラ需要が拡大しているベトナムは、地下鉄や橋梁など大規模なインフラ整備が進んでいるが、鋼材を使った構造物ではなく、コンクリート構造物が中心となっている現状がある。
同社は、その原因の1つとして現地における鋼構造の専門技術者が不足している点に着目。12年度から両大学と鋼構造に関する共同研究を進める中で、デザイン性の高さや耐震性能など鋼構造の優位性をPRする一方、社会貢献の一貫として将来的に鋼構造の建設プロジェクトを推進できるベトナム国内における技術者の育成に取り組んでいた。
新たに両大学の正規の授業に組み込まれることで、寄付講座の役割は終えるが、裏を返せば、ベトナム国内でより持続的に鋼構造技術者の育成が図られるだけの環境が整う。結果として、ベトナムにおける鋼構造の一層の普及と、それに伴う鉄鋼需要の拡大が期待されることになる。