【待望の医療拠点】和歌山県立医科大学薬学部建築工事 12月竣工目指す取り組みの数々 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【待望の医療拠点】和歌山県立医科大学薬学部建築工事 12月竣工目指す取り組みの数々

 和歌山市に建設中の和歌山県立医科大学薬学部新キャンパス工事が、来年春の開設に向け最盛期を迎えている。和歌山城を臨む市内屈指のロケーションに位置し、完成後は地域医療に貢献する人材育成の拠点としての役割を担うなど、大きな期待が寄せられている。建築施工を担当する東急建設・小池組JVは、周辺環境に配慮しつつBIMを始めとする最新技術導入にも意欲的に取り組んでいる。JVを率いる木村春喜所長(東急建設)は「地元の期待は大きい。年内の工事完成に向け万全を期したい」と意気込む。

ラーニングコモンズ棟の接続部に採用されたフィーレンディール構造


 2021年春の開設を予定している同大学の薬学部キャンパスとなる建物で、入学定員は100人、収容定員600人で、18の研究室を有する。5階建ての北棟と11階建ての南棟で構成し、2棟の間はラーニングコモンズ棟で接続する。設備工事は別途発注で、設計は東畑建築事務所・山口建築設計事務所JVが担当した。

 19年1月にスタートした建築工事は準備工事、山留め工事を経て杭工事に着手。6月前半からは掘削も始まり、基礎・躯体工事と進んだ。鉄骨建て方は南棟2基、北棟1基の計3基のタワークレーンを設置して進めた。20年1月末に北棟、2月初旬には南棟がそれぞれ上棟し建て方の進捗に伴って下階から外装工事と仕上げ工事がスタート。12月の竣工を目指している。

北棟のアリーナ屋根を構成する張弦梁構造


 「この建物には2つの特殊構造が採用されている」と木村所長は説明する。1つが北棟のアリーナ屋根を構成する張弦梁構造。コスト削減効果とデザイン性の両立が狙いで長さ18.8mのロングスパンに対応している。もう1つはラーニングコモンズ棟の接続部に採用されたフィーレンディール構造だ。トラス架構から斜材を省略した形態の四角形を単位とした構造骨組(はしごを横倒しにしたような骨組)で、この構造により1階エントランスとピロティは柱のない大空間を実現している。

木村所長


 ICT活用にも積極的に取り組んでいる。施工管理アプリケーションをインストールしたタブレットの活用を始め、朝礼看板は100インチサイズの電子モニターを活用。仮囲い看板もデジタルサイネージ化し、作業予定以外に完成パースや天気予報といった情報を発信することでイメージアップも狙った。

 ユニークなのはシャープ製モバイルロボット「ロボホン」の存在だ。現場内と現場事務所に1体ずつ配備、現場では新規入場者教育に利用している。「人によって話す内容にムラがあったりするが、ロボホンにはそういった心配がない。定型的な説明にはとても役立つ」。このほかウェブカメラを設置して関係者全員がリアルタイムで現場状況を確認できるよう遠隔での管理体制も整えている。

 東急建設は作業手順の見える化や情報共有の促進を目的に、着工段階で構造図を3次元化したBIMファーストモデルを現場に配布している。同現場でも鉄骨の梁貫通や張弦梁の施工手順についてこのファーストモデルをもとに施工検討を行ったところ「発注者や設計者にしっかりアピールできた。時代の流れは確実にBIMに向かっていると感じた」と木村所長は振り返る。

 9月末時点での工事進捗率は92.0%。作業ピークを迎えた現在、1日当たり約400人が入場し、東急建設関西支店管轄では最大規模の施工現場でもある。和歌山市内の中心部にある現場だけに第3者災害の防止を最重点課題と位置付け安全対策を徹底している。周辺では和歌山市発注の市民ホールなどの現場も稼働中で、月に1回は情報交換の場をもつなど連携しながら取り組んでいる。

 現場で働く人間同士の会話のきっかけづくりを心掛けているという木村所長。ICTやBIMといったテクノロジーに関心を寄せる一方、ヘチマやキュウリを植えたグリーンコーナーを現場に設けたり、熱中症対策の一環で始めた無料のかき氷サービスなどアナログな心づくしも忘れない。「パソコンやスマホで簡単に連絡が取れてしまう時代だからこそ、現場の中にいる時はコミュニケーションを大切にしたい」

完成予想

◆工事概要
▽名称=和歌山県立医科大学薬学部建築工事
▽建築主=公立大学法人和歌山県立医科大学
▽用途=学校
▽設計=東畑建築事務所・山口建築設計事務所JV
▽監理=東畑建築事務所・岡本設計JV
▽施工=東急建設・小池組JV(建築工事)
▽構造規模=S一部RC造地下1階地上11階建て延べ2万6305㎡
▽建築面積=4002㎡
▽建設地=和歌山市九番丁ほか
▽敷地面積=6854㎡
▽工期=2018年12月7日-20年12月11日

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