建設ICTの取り組みは多岐にわたる。3次元モデルデータなどの活用による業務効率化や生産性向上は通過点であり、最終的に目指すのは調査から設計、施工、維持管理をつなぐ一貫したデータ連携の流れだ。建築設計事務所、ゼネコン、建設コンサルタントの計36社の最新事例から、建設ICTのトレンドを読む。
東畑建築事務所/某社拠点施設整備プロジェクト/設計プロセスから維持管理まで
設計ツールとしてのBIMモデリングに留まらず、さまざまなフェーズでの情報の利活用に取り組んでいる。生産・オフィス機能の拠点整備となるこのプロジェクトでは、BIMモデルプロジェクトの標準環境となっているクラウド連携が可能な環境を整備し、大阪オフィスだけでなく、東京オフィスの担当者も同時にデータを扱えるコンカレントエンジニアリングを実践している。また、モデルプロジェクトのマネージメントにおいては、わが社独自のマネージメントシート、評価シートを活用し、維持管理を見据えたデータ構築にも取り組んでいる。
(上羽一輝/BIM推進室長)
安井建築設計事務所/コンピュテーショナルデザイン手法の活用/“ひとの感性”をデジタルで最適化
当社では、設計品質の向上と発注者に認知されるBIMに取り組むとともに、コンピュテーショナルデザインやAI等で“ひとの感性”とBIMをつなぎ、豊かなデザインの創出を目指している。例えば図は、植物が太陽の光を目一杯受けるように、葉をイメージしたプレートを重ならないように、かつ取り付け可能な納まりも考慮し、柱上部にランダムに配置させたデザイン案である。これらの案を密度、面積、数で評価したパレート解を参考に、設計者は植物からの癒しという“ひとの感性”を満足させつつ最適な案を選択する。
(戸泉協/ICT・データマネジメント部主幹)
大林組/日本製粉(株)福岡工場プレミックス工場新設工事/ワンモデルでBIM一貫利用
当プロジェクトは、九州支店初の「ワンモデルによるBIM一貫利用プロジェクト」となった。社内外の関係者が同一モデル(データ)を使用するため、BIM入力ルールを監視調整する専門職「BIMコーディネーター」を配置し、英国BIM成熟度モデル最高レベル3に値する統合モデル(ワンモデル)を制作、モデルから設計図を切出し、着工前に生産設計図をフロントローディングで作成し、協力会社と連携した。モデルはお客様にも提供し、分かりやすいと好評を得ることができた。
(中村敦史/九州支店建築工事部BIMマネジメント課課長)
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