【著者と1時間】正解のない時代の問いに対する"新たな答え"とは 『Intelligence3.0』 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

公式ブログ

【著者と1時間】正解のない時代の問いに対する”新たな答え”とは 『Intelligence3.0』

 IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などテクノロジーの急速な進化と普及が、あらゆる産業、社会の変革を強力に推し進めている。新技術が生活やビジネスに圧倒的利便性や生産性向上をもたらす一方で、その便利さに翻弄され、上手に使いこなせないジレンマなどから現代特有の課題も生じている。社会が投げかける新たな“問い”を解決するキーワードとして、本書は「Intelligence3.0」を提示する。その中に、さまざまな複合課題に直面する地方創生のヒントが詰まっている。

山下PMC事業統括本部知財・広報部長 高木啓司氏


 著者の高木啓司山下PMC事業統括本部知財・広報部長は、「正解のない時代には、新たな問いに対する“新たな答え”を提供する仕事が社会から渇望されている。そのためのインテリジェンス(知性)を獲得することが求められている」と本書の趣旨を説明する。現代社会の課題を解決する仕事の知恵や情報をインテリジェンス3.0と定義し、著者が経験した地方創生や建設プロジェクトのコンサルティングに基づく、実践的事例や教養を紹介する。

 地方創生では、東京と地方の関係性を読み解き、「一見するとさまざまなイノベーションや情報を発信している東京だが、その元ネタになるものは背後にある地方から生じたものが多い。東京は地方からモノとヒトを吸収、消費するだけでなく、さまざまなイノベーションを吸い上げ、マッチング、マーケティングする場として機能している」と説明する。

 相互に補完する関係だからこそ、「地方は東京のような都市化を目指すのでなく、地方らしさを存続することが重要になる。そのような投資が持続的なイノベーションにつながり、東京の発展に結びつく」と“豊かさの方程式”を示す。

 地方創生の実例では、自身が手掛ける山梨県丹波山村を紹介し、「村人にとって山は生活の糧を得る仕事場だ。一度も会社組織に所属することなく農業や自営業を営む人も多い。そこにあるのは“ヤマに生まれヤマに死ぬ”生活の営みであり、都会の標準的サラリーマン家庭の生活と異なる幸福や価値観を知らなければ過疎集落の問題は解決できない」と話す。

 都市生活と異なる社会や文化は地方に豊富に残されており、「ニューエコノミー、シェアリングエコノミー、サイクルエコノミーなどの新しい潮流と響きあう要素が、地域社会の経済指標に表れない部分に含まれている」と分析する。経済活動の外側の価値を見いだすことが重要であり、「地方社会の存続が日本の財産であり、都市に住むわれわれがどう向き合うかが次のテーマになる」と見据える。

 山下PMCで事業統括本部知財・広報部長を務める著者は、建物を建設するコンサルタントの仕事にとどまらず、背景にある「営みづくり」に建築行為の本質を見いだし、社会、経済、歴史、伝統、文化などを通じて地方創生から建設業の未来まで、幅広くイノベーションのあり方を模索した。

 建築行為の根幹をなす建築基準法については「民主主義の精神を具現化する独特の精神と成り立ちがある」という。それは建築確認に端的に表れ、「建築は行政から『許可』を得るのでなく、法の趣旨に合うかを『確認』する行為。『建設業の一人ひとりが責任を負うべき』という民主的精神に基づいている」と説明する。耐震偽装事件などの社会不信が規制強化につながったが、それは「建設業が自ら民主主義を毀損したことにほかならない」とし、自らが立脚する場所を改めて考え直すよう問題提起している。

『Intelligence3.0』
幻冬舎メディアコンサルティング
1320円(税込み)



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら