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清水建設、アルプスアルパイン、オムロン、日本IBMの4社による「次世代移動支援技術開発コンソーシアム」が開発を進めてきた視覚障害者移動支援ロボット「AI(人工知能)スーツケース」が社会実装に向けて大きく前進する。18日から東京都江東区の日本科学未来館で、AIスーツケースで常設展示を巡る一般向けのツアーが始まった。ツアーは実証実験も兼ねており、長期間にわたって大量のデータを蓄積できるため、多様な状況に対応するナビゲーション技術のさらなる向上が期待できる。視覚障害者向け誘導ロボットが一つの施設内で毎日運用されるのは世界初となる。
17日に開いたプレス体験会で同館の浅川智恵子館長は、ツアーが視覚障害者だけでなく誰でも体験できることを踏まえ、「ロボットが人々を支援するという未来の風景をいち早く多くの人に見てもらうことで、社会的な理解の深まりにもつながるのではないか」と話した。
ツアーの流れとしては、AIスーツケースに取り付けたスマートフォンで目的地を選択し、スマートフォンの読み上げ機能によって周囲にあるものの情報や展示内容を把握しながら、左手でハンドルを握り、スーツケースに導かれる形で進む。人や障害物に阻まれた場合は走行を止めたり、避けたりしてルートを変更するスーツケースの動きを体感しながら館内を巡る。
AIスーツケースには、画像認識をする深度カメラや、レーザー光を物体に照射して距離や方向を測定するLiDAR(レーザー式測距装置)を搭載。その情報から位置の推定や周りの歩行者の認識を行う。
同館の高木啓伸副館長は、清水建設がAIスーツケースの開発に参画していることについて、「サービスロボットを長年研究開発している同社の技術や知見が生かされている」と述べた。また、「建築物の設計データをサービスロボットに活用していけないかということも議論されている。ロボットが移動しやすいスロープの整備など、バリアフリーと重なる部分もある」とし、誘導ロボットなどの今後の発展に建設業界の協力が不可欠と説明した。