【BIM/CIM未来図】不動テトラ(下) i-Con2.0見据えた現場展開/開発部の存在感に高まり | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM未来図】不動テトラ(下) i-Con2.0見据えた現場展開/開発部の存在感に高まり

 不動テトラでは、現場主体のBIM/CIM活用にかじを切る中で、その支援役を担う土木事業本部技術部開発課の存在感も高まり始めた。開発課メンバーが現場支援ツールの開発を推し進め、それをきっかけに現場のBIM/CIM活用がまわり始めるケースも着実に増えている。

左から内池氏、小林氏、山崎氏、阿部氏


 スマートフォン『iPhone』の機能として、レーザー光で離れた場所にある物体の形状や距離を測定するリモートセンシング技術「LiDAR」を使った土量の簡易把握ツールもその一つだ。取得した地形データとBIM/CIMモデルと組み合わせることで、工事範囲の断面図を作成し、そこから土量計算が可能になり、出来形管理の活用にも期待できる。

 担当した開発課の阿部喜生氏は「現場がより効率的に作業できるツール開発に今後も取り組んでいきたい」と語る。LiDAR活用はトンネル工事でも有効と考え、電波を拾えない坑口内利用の課題を、中継基地局を置くことでクリアし、計画と実作業を比較検証する見える化ツールとして検証を始めた。

 このように社内では開発課の担当者が開発した現場向け便利ツールを現場に情報共有しながら普及を図る流れが定着しつつある。「現場と密に情報交換することで、現場の創意工夫を逆にシステムとして実現することもわれわれの役割」と強調する。現場主体のBIM/CIMに切り替えたことで、技術部開発課との社内連携がこれまで以上に広がってきた。

 時間外労働時間の上限規制が始まり、現場もその対応が強く求められている。CIM育成要員の第1期生として現在は現場でBIM/CIMの推進役を担う土木工事部DX推進課に所属する内池聖享氏は「BIM/CIMは業務の負担ではなく、有効に使うことで合意形成が早まり、それが業務の効率化につながる」と受け止めている。

 同社が現場主体のBIM/CIM活用を推し進める先には、国土交通省が掲げるi-Construction2.0への対応がある。i-Con2.0では40年度までに建設現場のオートメーション化を実現し、23年度比で1.5倍の生産性向上、3割の省人化を目指しており、受注者側の生産改革が目標達成の原動力になる。

 土木事業本部技術部の山崎真史副部長は「当社が進める現場主体のBIM/CIM活用は、ICT施工への展開を見据えている」と強調する。同社がオートデスクのBIMソフト『Revit』で作成した地盤改良モデルに、ビジュアルプログラミングツール『Dynamo』を使って関連属性情報付与の自動化システムを作成したのは2年前。担当した小林氏は「これを発展させた最新の取り組みはi-Con2.0につながる事例」と力を込める。

 新たな試みは盛り土の品質管理帳票作成を自動化するもので、盛り土モデルにICTのlogデータを連携し、BIM/CIM設計ツール『Civil 3D』上で締め固め機械の走行軌跡、転圧回数を描画する。プログラムはほぼ完成しており、「これから盛り土の実稼働現場へのトライアルを始め、現場施工にマッチしたプログラムのカスタマイズを図っていく」と明かす。

 同社は、オートデスクのBIM/CIMツールを自由に活用できるAECコレクションを80ライセンス確保し、23年度からは建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』のワークフロー管理ツール『Docs』を200ライセンス追加した。「現場主体のBIM/CIM活用によって関係者の情報共有が加速し、対象案件ではDocsが欠かせなくなる」(小林氏)。同社ではBIM/CIMによる現場改革が動き出そうとしている。

盛土BIM/CIMモデルの自動化



【B・C・I 未来図】ほかの記事はこちらから



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら