◇「建築と暮らす」テーマに新たな魅力発見
A 日本建築学会の全国大会が30日まで開催中だね。
B 9年ぶりとなる関東開催で、明治大学が会場となるのは初めてだ。テーマである「建築と暮らす」について、竹内徹会長は「多くの再開発が進行している都市・東京で、原点に立ち返ってこのテーマを考えるということは非常に意義深い」と思いを語っていた。さまざまな企画がめじろ押しで、連日、学生をはじめたくさんの人が詰めかけている。参加者は約1万人にのぼる見込みだ。
C 記念シンポジウムでは、建築家や哲学者、画家など多様な視点から分野横断的に、建築と暮らすことの意味を考えた。建築史家の倉方俊輔氏は、吉阪隆正が設計を手掛けた呉羽中学校の外廊下が、校庭のトラックのようにリレーで使われていた例や、自身が住む安藤忠雄氏設計のガラスブロックの家の内部で、子どもがシャボン玉を始めた例を挙げ、「普通では考えつかない行動を人間にさせるのは形の力でもあるが、使い手が建築の新しい姿を発見していくのが建築と暮らすことだと思う」と話していたことが印象的だった。
A 使う側が能動的に、新たな魅力を見つけていくことこそが、建築を輝かせるのかもしれないね。
B 1月に発生した能登半島地震の調査報告会も興味深かった。被害を受けた建物のほとんどが老朽化した木造家屋で、築年数の浅い建物で大きな被害を受けた事例はほとんどなく、耐震補強の有効性も確認できたという。
A やはり建て替えや耐震補強の必要性を再確認させられるね。地震はいつどこで起きてもおかしくない。都心部にも木造密集地域があり、対応は急務だ。人が暮らしを営む上で必須な建築には、防災という視点は欠かせないね。
◇背景に担い手確保、切実な人材獲得競争
A ところで、ゼネコンのテレビコマーシャル(CM)を見かけることが多くなった気がするんだが。
B 日曜のゴールデンタイムの清水建設や「タラタタッタタ♪」の長谷工コーポレーションはおなじみとして、大林組の佐藤健さんや熊谷組の川口春奈さん、戸田建設の広瀬アリスさんといった人気俳優を起用したCMはやはり目に留まるよね。香川の豊島美術館で勝負している鹿島の新CMも異彩を放っている。
C 昔の話をすると、大成建設の「地図に残る仕事」や清水建設の「昼間のパパ」のCMは今でも印象に残っているね。でも、なぜ今また力を入れているんだろうか。
B 背景にあるのは担い手の確保だろう。知られていなければ、志望してもらうことは不可能だ。その最たる例が最近のヒット作「奥村くみ」シリーズで、CMを流してからは、就職説明会で奥村組のブースには人だかりができていたという話も聞いた。若者のテレビ離れが言われて久しいが、やはりメディアの影響力はいまだ衰えていない。
C 1990年代初頭と同様に各社の業績が悪くないのも一因じゃないかな。利益確保にきゅうきゅうとしていた冬の時代に真っ先に切られたのが広告宣伝費だったからね。
B ある広報担当者は「採用のための費用はコストではなく今や投資だ」と言い切っていた。CMは学生だけでなく、その家族にも伝わる。就職活動のキーパーソンが親であることはよく聞く話だ。また、SNS(交流サイト)を使った広報活動も増えており、クロスメディア戦略は今後、さらに重要になるだろう。
D 個人的には発表会で有名人と会えるのがひそかな楽しみだったりもする。今後の各社の最新作や他の会社の新CMも期待大だな。